こんな時は、興味ある分野の本を読むのが良いようだ。
『悲しき熱帯』、『野生の思考』は読み直してしまったので、その他のレヴィ=ストロースの著作や、南アメリカの神話をAmazonで買って読んでいる。
先ずは『構造人類学』
この本はレヴィ=ストロースが書いたいくつかの代表的な論文を集めたもの。
内容は非常に濃くて、難しい(専門的)。
完全に読み切るまでに10日程度はかけた。
この本の中に初期のレヴィ=ストロースの構想はまとまっている。一読すれば『野生の思考』の裏付けとなる思考方法は理解できると思う。
特に先住民社会の親族構成の基本構造や、単純に2分割でとらえられがちであったそれまでの民族学者の観察を不十分として、より複雑な構造を見出す論文はおもしろい。
言語学と数学を使って新たな民族学を生み出そうとするパイオニアとしてのレヴィ=ストロースを読むことが出来る。
ものごとを整理して考えるには、このようにしてやればよいのか、という方法を教えてくれる点で、目からうろこであった。
次は、一連の『神話論理』の後に書かれた『小神話論理』の中の代表作である「やきもち焼きの土器つくり」。これはまだ現在も読んでいる最中であるが、土器の起源をめぐるたくさんの神話を比較研究し、そこから「経験的演繹」という(笑)直観的方法で、対立関係を取り出して、これらの神話の真意に迫る。
ヨタカがなぜ土器と関係するのかを、微に入り細に入り追及してある。
たくさんの神話のバリエーションが読めるのが良い。そこからどんな結論がでてくるのか、まだ最後まで読んでいないので楽しみである。
表紙のユーモラスな「ヨタカ」の絵がとても気に入っている。
最後に、ピエール・クラストルがグアラニ族の神話をまとめた『大いなる語り』。
これは神話の集成という点で良くまとまっており、読みやすかった。
先住民が語る神話は、南アメリカ全域でどれも何らかの関係があることを確認できる。
レヴィ=ストロースが言うブリコラージュが神話の世界でも生きている。
いろいろな話を、語られる対象を取り替えたり、逆の意味にしたりしていることがわかる。
ただ、編者であるクラストルはレヴィ=ストロースとは違った立場で神話を読む。
クラストルによれば、これらの神話は「国家」=「統一する首領」に対抗して起こった民間の呪術師(カライ)が説教して歩いた物語であり、ブラジル先住民族の魂そのものだ、という。
西洋文明によって破壊され、現在も破壊され続けている先住民族の文化。
地上は汚染されているので、新しい土地を求めて移動せよ、という先住民族の悲しい叫びが聞こえてくるようだ。彼らにとって精神の支柱となるのは、これらの昔から伝わってきた神話である。
以上だいたい現時点で読んできた本の感想を簡単にまとめてきたのだが、内容が豊富過ぎて少しオーバーフロー気味だ。
何回も読み直して、少しづつ理解していかなければならないと思った。