2019年10月30日水曜日

ニコ生富士登山中継滑落事故 登山がイヤになる出来事

富士登山ニコ生中継滑落事故

栗城史多氏がエベレスト登山中に亡くなる




10/28、富士山をニコニコ動画で生中継しながら登っていた人が滑落した。
今日、遺体で発見されたという。ご冥福をお祈りする。

この事故は、エベレストで亡くなった栗城史多氏の事故と大きく一致する部分がある。
両者とも、山をインターネットで中継しながら登っていたのだ。

冬の富士山(今の時期は完全に冬山である)は危険なことで有名である。
独立峰であるゆえの強風と、アイゼンの歯も立たないほど凍結した斜面。
特に今回は何日か前の雨のために、凍結が激しかったと思われる(動画でもその様子が分かる)。
滑落している時に写っているのは、ストックである。氷の斜面を、ピッケルを刺さないで登ったのだろうか?
アイゼンを使えば、氷の斜面でも、登ることだけはできる場合がある。しかし問題は下山時。
滑落したのは下山時のように見える。たとえアイゼンで登って来られたにせよ、下山時は滑って下山できなくなることもある。下りは大変滑りやすく、危険だ。
このような氷の斜面では、一旦滑りだすと人間の力では止めることが、できない。

このような危険な状況の山に、なぜ登ったのか?
彼をそこに向かわせたのは、何だったのか?

インターネットで情報を発信すると、注目を浴びたりすることがある。
登山系SNSやYouTube、ニコニコ動画等には、動画を評価する「いいね」ボタンがある。
以前にも別の場所で書いたことがあるが、このボタンこそ、発信者を迷わせる元凶である。

注目を浴びるために、いいねをもらうために、とんでもなく危険なことでもやってしまう。
一種の「いいね」依存症ともいうべき状況に、発信者を追い込んでしまうシステム。
いったんそれにはまってしまうと、それを止めることは、まさに氷の斜面を滑落する人を止めるのと同じように難しい。衆人の注目を浴びる行いは、一歩誤れば非常に危険な行為なのだ。

女の人が美しくなりたいために何十回も整形手術を繰り返し、生命の危険に陥るように、そして、アルコール依存症患者が、アルコールによって身も心もボロボロになるように、それはハマった人の命を奪ってしまうことがある。

これは何をするにしても、注意しなければならないポイントだ。
たとえそれが仕事や、慈善事業であったにしてもである。
何事も、「ほどほどに」しなければならない。

どんなに楽しい事でも、これ以上はやらない、明らかに命を危険にさらすことはやらない、という基準を、自分の中に作っておかなければならない。たとえそれが世の称賛を浴びるような善行であったとしても、である。

人生は、死んでしまったらそこで終わりであろう。
いったい、何が残るというのか?

また、登山がイヤになる事故が発生した。
世間の人も思っているだろう。「なぜ山になんか登るんだろう」と。

無謀なことをする登山者が出るたびに、ほんとうに登山を楽しみにしている人や、ほんとうに山を愛している人たちが悲しい思いをするのだ。

2019年10月28日月曜日

「価値」って何だろう?

奴奈川石などは、科学者が見出さなければただの石ころであった。価値なんて、そんなものだ。

世の中にはいろんな物がある。
その中で今の人がもっとも価値がある、と考えているものはおそらく「金」であろう。
この「金」という鉱物の価値があるのは、

1、希少であること
2、変質しないこと

が主な理由だ。これをたくさん持つことが、現代人のほとんどが目指しているところか?
これを持っていることによって、飢えや寒さに苦しむことがない。食物、住居や衣服と交換できるからだ。
つまり、これを持っていることによって、少なくとも死ぬまでの間は、命が保障されるわけだ。

近代以降、「金」はあまりにも希少なため、その代りに「通貨」が国家によって発行されるようになった。これは「金」と同じように、食料その他と交換できる。
最初は銅などの金属、そのうちに「紙」、今では暗号化されたデータがその役割を担うことになっている。(鉱物が「価値」を担うのは、余りにも時代遅れだ。もはやそんな時代である。)

暗号化されたデータは、理論的に書き換えが不可能であり、物理的に盗難にあうこともないために、近年爆発的に普及してきている。しかしながら、これにはある問題がある。

まず、暗号化されたデータの「価値」を、いったい誰が保障するのか?
クレジットカードその他は、「現金」の裏付けがあるから、「価値」が認められているに過ぎない。それは結局「国家」が価値を認めている、ということになる。しかし、そのシステムが崩壊すれば、「価値」は保障されるのだろうか?

また、これらのデータを「価値」ある物と認められないし、理解できない人たちにとっては、全く「価値」のないものとなる。第一、その使用の手続きを行うことが、不可能なのであるから。

つまり「価値」というのは、何らかの「裏付け」もしくは「保障」ということにならないか?

糸魚川の翡翠などが、その金銭的「価値」が認められる以前は、漬物を漬けるための石として使われていたらしい。
理由は、比重が大きいので、重く、漬物がよく漬かったかららしい。また、漁師が番屋の屋根を風で吹き飛ばされないために、屋根に乗せたという。これもこの石ころの「価値」を見出した例である。
じつに実用的な「価値」ではないだろうか。

最初に話を戻すと「金」は永遠に変質ぜず、産出量が少ないため突然多量に存在する可能性がないために、「価値」があると認められた金属である。

これは翡翠やその他の宝石にも共通するように思う。
「金」の価値と類似するところがあるから、宝石には価値がある。
また、宝石には変質せず、希少であるという価値の他に「美しい」という価値がある。
そのため、とんでもない金額で取引されている場合がある。
美術品としての「価値」も併せ持っているのである。

しかしながら、「価値」は誰かがそれを「価値」がある、と言わなければ成立しない。
もしもだれも言う者がいなければ、それは無価値である。

結局、「価値」というものは人間が決めているものである、と言えるだろう。

したがって、この世で一番価値のあるものは、価値を創り出した「人間」ということにならないだろうか?

また「価値」は時代によって大きく変わる。
翡翠の歴史を見れば分かるように、縄文時代は最高の価値を持っていたが、仏教が普及した奈良時代に至っては、野蛮人の価値だ、と忌み嫌われ、近年に至るまで、すっかり忘れ去られていたのである。

なんども言うように、翡翠なんてただの石ころである。
「金」も同じようなことが言える。

2019年10月27日日曜日

青海石 世界で唯一の鉱物

昨日書いた、苦土リーベック閃石曹長岩にはストロンチウム斜方ホアキン石(奴奈川石)が含まれることは割と多いそうだ。
青海川には苦土リーベック閃石曹長岩が河床にある場所はあるそうだが、奴奈川石その他希少な鉱物を含む原石は上流の金山谷以外には無いという。

またここから産する苦土リーベック閃石曹長岩には、世界でここからしか発見されていない「青海石」が含まれることがあるという。(青海石の詳しい説明は、ここをクリック
先日拾った石には、奴奈川石と思われる黄色い鉱物が多数含まれているようだから、この石が金山谷から海岸に流れ出たものであることは間違いなさそうである。

世界で糸魚川からしか見つかっておらず、同じ化学式を持つものが現時点で他に発見されていない鉱物が、もしも含まれていたなら、それだけで感動ものである。地球上で唯一の物質なんて、めったに見られるものではないから。

(翡翠などは、世界を見渡せば結構産地がある。最大の産地はミャンマーであり、ここからは糸魚川のものよりさらに高品質の翡翠を産出している。他にもロシアやグアテマラでも産出している)

じっくりと観察して、探してみることにした。

この褐色の鉱物は、繊維状であるけれども、母岩の中に埋没しているように見える。

別の角度から見ると、少し繊維質であることだけは、かろうじてわかる。これが青海石なのだろうか?

その他にも今まで見たこともないブルーの結晶を見つけた。これがベニト石というものなのかな?この石はサファイヤよりも美しいと言われているらしい。この母石は非常にたくさんの鉱物から構成されて居るようで、観察に飽きることがない(他にもいろいろ含まれているようである)。

2019年10月25日金曜日

奴奈川石? ヒスイよりレアな石

先日のラベンダービーチでの石採取の時、青色の混じった曹長岩と思われる石を拾っていた。
青い石は珍しいので、表面の大きな結晶からヒスイではない、と思ったものの、キープしていたのであった。

後から調べてみると、この石は「苦土リーベック閃石曹長岩」という、ヒスイよりさらにレアな石である可能性があることがわかった。
この石には「ストロンチウム斜方ホアキン石(奴奈川石)」や、青海石糸魚川石という糸魚川で発見された新鉱物が含まれることがあるらしい。

この石の産地は、現在は厳しく立ち入りが禁じられている青海川上流の金山谷である。
ここは蛇紋岩帯があり、ヒスイやその他のめずらしい石がある場所でもある。

苦土リーベック閃石の化学式はNa2(Mg3Fe3+2)Si8O22(OH)2という、複雑なものである。ナトリウム、マグネシウム、鉄、ケイ素、酸素、水素から構成される。

苦土とはマグネシウムのことである。

リーベック閃石は、繊維状になると「青石綿」と呼ばれる。
これは非常に発がん性の高い危険な物質であるから、この石を割ったり、熱を加えたりしないほうが良いと思われる。まあ、硬いのでそんなに簡単には割れないが。
珍しいけれども、危ない「毒気」を含んでいる、ということだ。

奴奈川石は世界で初めて、糸魚川で発見されていたが、学会発表はされなかった。
そのため、のちに別の場所で発見された時の「ストロンチウム斜方ホアキン石」の名が正式採用された。

化学式は Sr2Ba2(Na,Fe2+)2Ti2Si8O24(O,OH)・H2Oという複雑なものだ。ストロンチウム、バリウム、ナトリウム、鉄、チタン、ケイ素、酸素、水素から成る黄色い石である。

本物なら、めったに拾えない珍しい石であることは確かだ。
糸魚川は、プレートの境界にあるので、このような石が出るのだと思う。

ともあれ、もしも奴奈川石であれば、大きなヒスイを拾ったよりも何倍もうれしい。
糸魚川での石拾いの目標を達成した、と言えるほどだ。

きっと青海黒姫山の沼河比売様が、授けて下さった石なのだろう。
ありがとうございます!

青黒い色が苦土リーベック閃石の特徴だという。曹長岩の特徴である大きな結晶がある。

晶洞の中に、黄色い結晶が。これが奴奈川石だろうか?

他の場所にも、数カ所確認できる。

クラックの付近にも、集まっている。

大きな結晶は、青黒い色をしている。

ーーーーーー 追記(別のカメラで撮影) ーーーーーーー

この少し褐色がかった鉱物は何だろう?

色を調整すると、リーベック閃石の色らしい。晶洞にあるのは、やはり奴奈川石のようだ。

別の場所にある奴奈川石と思われる黄色い鉱物。青い石に黄色い鉱物が含まれる例は、他にあるのかな?

この褐色の繊維状の鉱物が「青海石」であれば、さらにレアだ。色からして、その可能性もあると思っているが、Webの写真をみると、本物ではもっと繊維の状態がわかるようだ。しかし、一本だけあるようにも見えるのだけど。私の古いカメラでは、この辺りで限界。

2019年10月23日水曜日

海の妖怪は怖い

海の妖怪は陰湿で、生きている人をとにかく死なせようとするため、怪談のネタには事欠かないでしょう。日本では平家の武者の亡霊が甲冑姿で海上に集まっていたり、海外でも幽霊船の目撃談などがありますね。基本的にかわいげなどが一切ない、本気で人を危なくさせる海の妖怪の取って置きの怪談をご紹介します。
(出典:http://protelt.com/umi-youkai/uminoyoukai-5

海の妖怪は、山の妖怪のように「話せばわかる」というタイプの妖怪ではないらしい。
濡れ女七人ミサキ(もともとは池に関係する妖怪らしいが、海辺にも現れるという。要は「水」に関係する妖怪なのであろう)など、海で亡くなった人が化けたものではないか、と思われる妖怪が多い。
海は山に比べて、危険の種類が違う。相手は大海原、海水。
大波にさらわれて溺れれば、どこにも逃げ道は無く、ただ死あるのみ。

濡れ女は非常に残忍な「牛鬼」の手先であり、混沌の象徴である「赤子」を人間に渡す。
赤子は急に重くなり、逃げようすると「牛鬼」があらわれ、渡された人間を食い殺すと言う。

海は、漁師が「甲板板一枚、下は地獄」と表現したように、失敗すると容赦無く人間の命を奪う自然環境だ、ということであろう。

穂高のジャンダルムから滑落したとしても、助かる人間はいる。
しかし、海岸の絶壁から、海に転落すれば、ほぼ、助からない。
下が水だ、ということは、それだけ危険なのである。

ヒスイ探しで、けっこう荒れた海の中を探索する人たちや、波打ち際より沖を何のためらいもなく歩く人たちを良く見かける。
非常に危険な行為だと思う。特に、親不知近辺の日本海は波が荒く、突然の大波に会うと、命が縮む思いをする。

もしかしたら、山よりもずっと危険なのかもしれない。

ひすいなんて、ただの石ころだよ

神秘の光、というほどのものでもない。ガラスの仲間。命をかけて採集するほどのものでもないし、それほど価値のあるものでもない。


越中宮崎海岸 人がたくさん過ぎ

しばらく晴れそうもないので、多少無理して外に出る。
今月は山に登っていない。最近は海岸をうろつくことの方が圧倒的に多くなった。
まあ、私の登山もそろそろ終着点を見つけなきゃならないと思っていたし。
しかし、終着点が海になるのは、あまり良くない。シーカヤックで事故を起こした、有名な山小屋の主人もおられる。

あまりヒスイ探しに熱中すると、海の中を探したくなったり、高い波が来ても恐怖でなくなったりするらしい。
そこまでやるつもりはない。
海の亡者たちに足を引っ張られて、溺れ死ぬのは、御免被るからだ。

今月はもう休みなしだ。

比較的波が無いようにみえるかも知れないが、時々高い波が押し寄せる。この海岸では、注意しなければならないコンディションだ。

もう11月近いのに、夏の雲が出ている。

駐車場近くは、たくさんの人だかり。みな、ヒスイを探している。人が多すぎるので、ずっと北のほうまで足を延ばす。しかし、見つからない。高い波の中、男性が海に入ってけっこう深い場所を探しておられた。危なくないのかなあ?

駐車場前の海岸は結構な人出だ。これじゃ、見つからないわな。

諦めて帰途につく。今日は、海の空気を吸いに来た、と思ったら気が晴れた。

今日拾ったヒスイ。唯一、確信できるもの。緑。

これは、なかなか判別するのが難しいだろうな。

おそらくロディン岩。

透過してみる。ヒスイの部分もあるのかな。

小さな玉髄。縞模様があって、比較的きれいなものだ。


2019年10月22日火曜日

即位礼正殿の儀 八尺瓊の勾玉

ヒスイ

今に伝わらず、失われた風土記である「越後国風土記」。
この中に、「八坂丹(やさかに)の玉」に関する記述がある。
天皇が重要な儀式の時に必ず持参する三種の神器の一つである「八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)」の「八尺瓊」を、ここでは「八坂丹」と表記している。

当時の日本語は文字を持たなかったために、漢字の音を当てた。それが「万葉仮名」である。従って、漢字は発音を表しており、漢字自体に意味はない。

この八坂丹の記述について、古越後国風土記逸文を見ると、以下のようになっている。

「越後国風土記曰、八坂丹玉名、謂玉色青、故云青八坂丹玉也」

(越後の国の風土記に言う、八坂丹とは玉の名である。玉の色が青いということを言うために、青八坂丹の玉と言うのである。)
(一番理解できる以下の著の解釈を採用した。井上通泰『上代歴史地理新考 : 南海道 山陰道 山陽道 北陸道』、昭和16年、三省堂)

これによれば、八尺瓊の勾玉の色は青い、ということになる。

古代は青と緑の区別はあまりなかった。新緑のことを「青若葉」と言ったりしていた。
現在ですら、信号機の色が緑であるにもかかわらず「青信号」と言う。

玉の色が青い、ということは、ヒスイか、ネフライトか、それとも石英のようなものか?

それはともあれ、ここで重要なのは古い越後国風土記に八坂丹の玉の話が出てくることである。

これは昔、八坂丹(やさかに、の「やさか」とは弥栄のことであり、八坂丹とは「栄える力を持つ玉」を意味するだろう)の玉が、新潟県に産したことを示す。

そして、新潟でこのような玉を産する場所といえば、糸魚川以外に考えられない。
しかも、この周辺では縄文時代のヒスイ加工場跡が出土したり、実際にひすいやネフライトの勾玉が出土したりしているのだ。

糸魚川のヒスイかネフライトが、皇室の重要な宝物になっていることは何を意味するのか?

天皇ですら、実物を見ることを禁じられているという「八尺瓊勾玉」。
平安時代に冷泉天皇という方が、実際にご覧になろうとされると、煙が出て見えなかった、という伝説もある。

言葉の意味からすれば、天皇家のますますのご発展をもたらす玉である。
今日は即位礼正殿の儀が行われ、内外に広く天皇の御即位を示される日。

皆でお祝いしよう。

2019年10月21日月曜日

ロディン岩とヒスイ 見分けるのは極めて難しい

※ 糸魚川で拾える石は、ほぼ100%ひすいじゃないです。ひすいを含んだ岩石を「ひすい」だとは言いません。ここも読んでくださいね。

ヒスイを探していると必ず間違えると言ってもよい「ロディン岩」と「ひすい」。
岩石学辞典の解説によれば、ロディン岩の正式名称はロディンジャイトと言い、カルシウム石榴石、透輝石、ヴェスヴィアナイトなどのカルシウム成分(石灰岩は炭酸カルシウム)を含む岩石で、蛇紋岩の中に小岩脈として生成する(ヒスイも蛇紋岩の中に生成する)。ロディンの名は、ニュージーランドのダン山のロディン川に由来する。

典型的なロディン岩。晶洞といわれる小さな穴があり、その中に結晶がきらきら光っている。比重はひすいと変わらない。この石は3.2以上。一部にはひすいを含んでいるかもしれないが、普通これをひすいだとはみなさない。薄緑の脈状の部分を持ち、割れやすいと言われているが、そうでもないものもあるようだ。いろいろな種類があり、緑の濃いものはよくひすいと間違われる。あまり透明感がないが光は通す。ざらざらした触感。表面に「ソーダ珪灰石」の繊維状の結晶がある場合、ロディン岩の可能性が高い。緑の原因は「緑簾石」だと言われる。ピンク色のものは「桃簾石」と言われ、昔ピンク翡翠と言われていた。


これは単鉱物質ヒスイ輝石岩とは全く異なる科学的組成であるが、ヒスイと非常によく似ており、見分けるのは容易ではない。
インターネット上で「ひすい」であるとして転売されている石の中には、少なからずこれや、先に紹介したキツネ石が混じっているものと思われる。

ひすい拾った!やったーと書いてあるページを見ると、蛇紋石やこのロディン岩ではないか?と思うような石がたまにある(このブログで過去に紹介した石の中にも、少なからずある(笑))。

見分けるのが難しい理由として、ヒスイと比重がほとんど変わらない、同じような場所から生成するために、外観や質感が非常に紛らわしく、光も綺麗に通すので、相当慣れた人でも判別に苦労すると思われる。

また、表面にきらきらした結晶がある場合が多い。

ヒスイの特徴を持ちながら、ヒスイでない石なのである。しかも、本物のヒスイ輝石を一部含むこともあるために、さらに判別を困難にしている。
フォッサマグナミュージアムで見てもらって、確実にひすいだ、としてもラベルをよく見れば「ひすいを含んだ岩石」「ひすい輝石岩」と書いてあるであろう。これは、ひすいの含有量にまで言及していない。ロディン岩とひすいは同じような場所から出る石であるために、専門家にもおそらく正確な判別は困難なのであろう、と想像する。

表面がざらざらしていて、絵の具のような緑色がべったり付いている、と形容されるが、それもあてにならない。あまり研磨されていないひすいだと、表面がザラザラしていることもあるからだ。

あえて言えば、ヒスイは非常に上品な、内にこもったような光を持っているように見えるに対し、ロディン岩は表面的な光具合であることだろうか?

私もまだ判別については、あまり自信がない。
まだまだ、判別眼を鍛える必要がある。

ロディン岩自体は、悪い石ではない。数も少なく、きれいな石も多い。十分鑑賞に足りる石である。

左がロディン岩やきつね石だと思っている石。 右がひすいだと思っている石。
鑑定してもらったわけではないので、私の勘でしかない。
ロディン岩の緑色は「緑簾石」であるとされる。きれいに色を通す場合があり、非常に紛らわしい。

緑の石を探すと、99%きつね石(だいたいが緑色の石英)を拾います。
白い石を探すと、99%まで石英を拾います。
灰色の石は、ほぼ曹長岩だと思います。
ひすいは本当に出会えない石です。
朝から晩まで探しても、何にも拾えないことが5回のうち4回ぐらいあります。

2019年10月19日土曜日

キツネ石も美しい

キツネ石は「ひすいに似ていて、だまされて拾ってしまう」ことから、名付けられた名前。キツネ石という鉱物は存在しないが、大抵が緑色の石英のような気がする。
これ以外にも、ロディン岩(ロジン岩)というひすいの風化したような鉱物が存在し、どちらもあまり喜ばれない。
例えば、クロダイ釣りをしていて、ボラが釣れたとか、そういう感覚で言われる。

しかし、鉱物に関してはこの概念はあまり当たらない、と思う。
緑石英の美しいものはクリソプレーズ(緑玉髄)と言われ、宝石扱いである。
また、石英や玉髄は光を通すとたいてい黄色になるにもかかわらず、中には純白の光を放つものもある。これはとても美しいものだ。

ひすいは確かに美しいし、靭性もあるから丈夫な石で割れたりしないだろう。
ただ、それだけで過大な評価を受けている一面はないだろうか?
キツネ石と言われる緑色の石英質の石は、実はひすいよりもずっと透過光が美しいのだ。
特に緑色の石英は。
石英は地殻の約90%を占める、どこにでもある鉱物である。
公園の泥、河原の砂もほとんどが石英質だろう。
しかしながら、その結晶である玉髄や水晶は、非常にきれいなものである。
また、濃い緑色の石英は、海岸以外ではなかなか拾えないものである。
捨てるだけではなく、鑑賞してみてはどうだろうか?

私は「美しさ」というのはその質的な価値以上の何かであると思うのだ。

緑色の石英たち。表面の大きな結晶、比重の軽さ、質感などからそれとわかるが、ひすい探しを始めた頃は、これらをひすいであるとおもってしまう。また、ロジン岩という非常によく似た鉱物もある。しかしながら、これらの鉱物が美しくない、ということは全くない。むしろひすいより美しいものがある。

緑の脈の入る石英だと思われる(曹長石かもしれない)。

表面に何らかの鉱物が付着している(透閃石だと思われる。下の黒い鉱物はおそらく角閃石であろう)。

もう一つの石と並べてみる。質感は同じ。しかし中に走る緑の脈は非常に美しい(曹長石だろうか)。

光を透過させてみる。全体にさわやかで美しい緑が広がる。

純白の石に光を透過させてみると、石全体が純白の光に包まれる。これは石英だ。もしかしたら、水晶に近いものなのかも。

大波の中、命がけで拾った緑石英(笑)。全体が濃い緑色。透過光はどんなひすいよりも美しい。

先ほどの石英(曹長石?)を別の角度から透過させてみる。全体に広がる緑色。

何かの鉱物に覆われていた石も、光をあてると全体が美しい緑色につつまれる。これをキツネ石だといって捨てるなんて、もったいない。

別の石の透過光。やはり緑石英は鑑賞に足りる良い石です(曹長石だったらこの部分はひすいかもしれない)。



2019年10月18日金曜日

ひすいの結晶

ひすいの特徴として、よく言われるのが「味の素みたいな結晶」があること。
ヒスイ輝石は、細かい結晶の集合なので、かならずこの結晶がある。

下の写真は真正のひすいをマクロ撮影したもの。
磨かれた石ではあるが、その特徴である結晶は光を反射して輝いている。

「ひすいであるかどうか」に関して、一部分だけひすいを含んだものは、比重が軽くなる場合があり、その場合は、「結晶があるかどうか」が一つの判断材料になる。

大きさは1mm〜3mmと言われているが、それは違うと思う。
おそらく0.5mm以下だと思う。
もっと緻密なものになると、肉眼で確認するのは難しくなる。

だが、この結晶構造であることこそ、ひすいの1番の特徴である。
味の素、というよりは非常に細かい、きらきらした結晶が見えるか、どうか。

しかしながら、他の鉱物にも結晶が見られることもある。
その場合、ひすいのように細かくなく、それこそ何ミリもある大きな結晶であることが多いように思う。石英の結晶は特に大きく、1cmぐらいかそれ以上ある場合もある。それはそれだけで判定材料になる。

インターネットにはさまざまな情報があるが、それぞれが違う見解を示しているため、絶対にこれが正しい、というものがない。ひすいの判定が極めて難しい証拠である。

ただ、鉱物学的に、ひすいは細かい結晶が集まっているものであることは明らかなので、実際に結晶の様子を見て判断することは間違いではないと思われる。

非常に細かい結晶で構成されている。よく「針状だ」といわれるが、小さすぎてそのようには見えない。

ひすいの端材 

海岸を歩いていると「不自然に角張った石」を拾うことがある。
これはおそらく地元のひすい加工業者が、使えない部分とかひすいでない部分を切り取って捨てたものである。しかしごく一部にひすいを含んでいることがある。
下の石は明らかに人工的に切られた雰囲気がある。
一部にひすいの結晶が見られ「どんな石がひすいなのか」を判断する時に役立つ。
もともと不要な部分を捨てたものなので、大部分がひすいではないけれども。

不自然に角張っている。ほとんどが曹長石だと思われるが、ごく一部分、ひすいと思われる場所がある。しかし比重は2.7。いらない部分を捨てたものだから、こんなもんか。

これは近くで拾った白ひすいではないかと思った石。表面の針状結晶、ごくうっすらと緑色な点があるが、比重が2.7しかないので、違うだろう。これも一部にはヒスイを含んでいるのだろう。

2019年10月17日木曜日

ラベンダービーチ 翡翠ハンターたくさん

今日は晴れてきたので、久しぶりに翡翠ハンティング。
勝山海岸は駐車場が駐車禁止になり、入りにくかったので、青海川の向こう側の「ラベンダービーチ」で探す事にした。

ここはラベンダー翡翠が拾える、という触れ込みであるが、ラベンダー翡翠なんて、レア中のレアなので、まず普通の人には拾えない、と思ったほうがよい。

緑のひすいが100個あったとしたら、ラベンダー翡翠はそのうちの1個あるかどうかぐらいだと思う。ちなみに私はまだお目にかかったことが無い。


ラベンダービーチの入り口にある、沼河比売(ぬながわひめ)像。腕には大きな勾玉がかかっている。

海岸で見つかる!という石の解説。なかなか見つからない石ばっかり。

像の横にある、沼河比売のつくばい。糸魚川の人は奴奈川姫という表記を嫌う。「奴」というのは、奴隷のことだからだ。

越後の風土記に曰く、八坂丹は玉の名なり。玉の色青きを謂う。故に青八坂丹の玉と云う也。(八坂丹とは玉の別名である。青い玉の事をそのように言う。なので青八坂丹とも言うのだ。)

台風の後だが、高波はもうおさまっていた。

沖は濁流のために濁っている。

今日はたくさんの翡翠ハンターで賑わっていた。大波の後を探すと見つかりやすい、らしい。しかし、一向に見つからないのは何故か?青海黒姫山もすっきり見える。このアングルから見ると、真正面だな。

青海川河口まで歩いてみる。今日はたくさん人がいたので、たぶんダメだな。ここから見る勝山もいいね。

結局、あまりはっきりした石は拾えなかった。とぼとぼと帰途につく。

今日の石1。たぶんグリーンな石英。

今日の石2。これはたぶん翡翠。

今日の石3。これもそうだと思うが、蛇紋石っぽい。翡翠は蛇紋岩にくっついてくるらしい。石英にはくっつかないけれども。