2019年5月31日金曜日

本物のヒスイって何だろう?

比重はあるが、すべて翡翠ではない、と思われます(ひすい判定は素人には不可能でしょうね)。

※ 糸魚川で拾える石は、ほぼ100%ひすいじゃないです。ひすいを含んだ岩石を「ひすい」だとは言いません。ここも読んでくださいね。


海岸から拾ってきた石を、毎晩眺めていたが、どうしても「本物」が知りたくて、何か方法が無いものだろうか、と調べていた。

すると、「比重」を調べると、判別できるらしいとの情報を得た。

(※ 注意:ひすいに非常に似た岩石であるロディン岩も、比重はひすいとほぼ同じである。したがってこの方法は、あまりあてにならない。
この方法が適用できるのは、拾った石が「もしかしたらヒスイではないか」という場合だけである。角閃石のようにあきらかに違う石の場合、ひすいと変わらない比重のものがほとんど(結晶質の変成岩、ひすい以外の輝石のようなものは、比重が3ぐらいは普通)なので、あくまでも目安程度にしかならない。
この方法で判別可能なのは、比重の低い石英、曹長岩などに対してだけである)

キッチンスケール(重量計)とカップと水、輪ゴムがあれば、「アルキメデスの原理」を使って、簡易的に「比重」を計測できるらしい。

やり方は簡単だ。まず石の重さを計る。
そして、水を入れたカップを乗せ、スケールをゼロにして、石を水中に吊るす。この時、石は完全に水没していなければならない。また、下に着いたり、横に触れたりしてはいけない。

物体の体積分だけ、水が押しのけられるので、その増加した重量を計測するのである。
(物体の密度が大きければ、それだけ物質が詰まっているということなので、体積が小さくなり、押しのけられる水の量は相対的に少なくなるのである。)

純粋な水の比重は約1である(4度の時)。水道水では、温度も高く、カルキなどの不純物も含むので、若干の誤差はあるだろうが、無視できる範囲内である。

物質は、上向きの浮力を得る。
水より軽い物質が水に浮かぶのは、密度が水より小さいからである。
水と油が混じらないのは、そのためだ。

水に沈めた時に押しのけられる水の量は、
その物質の、水にたいする浮力を示している。
つまり、物体の重量に対して、押しのけられる水の量が大きければ大きいほど、体積が大きく、浮力も大きくなる。従ってその物質の密度が低いことになるのである。

従って物体の比重は、以下の公式で求められることになるのである。

重量÷体積=比重

例えば、石の重さが140gあったとする。
そしてこの石を水の中に吊るした時、40g増加したとする。

この時、水に対する比重は140÷40=3.5である。(水の3.5倍、密度が高いということである)
(仮に50g増加すれば、比重は2.8になってしまう)

ヒスイの比重は3.25−3.35だとされているので、不純物を考慮して少なくとも、3以上、3付近の比重がなければならない。
比重が2.6ぐらいだと、その石は石英のようなものだ、ということになる。

上の写真は、比重が3.1を超えたものだが、もっとも高いものは真ん中の白に青灰色の混じった石で3.2ほどあった。

他にも3付近の石は多少あったが、これはおそらく輝石類を含んではいるものの、他の要素も混じっているものだと思われる。

あきらかに翡翠でない石だと、2.6とか2.5付近に集まる。中途半端な値を示す石は、ほとんど無いので、翡翠を判別するには、とても良い方法だ。

私の場合、石英と翡翠を見間違えていることが多いことが分かった。

もちろん、誤差もあるのだが、結果がわりとはっきり出る。

2019年5月24日金曜日

ヒスイ探し 2回目

どうしてもヒスイを探したかったので、もう一回、青海黒姫山の麓の海岸へ。
(妹がここを見たら「兄貴らしい」と言うだろうな笑)

非常に暑く、日射病、熱射病の危機と闘いながら、丸一日、海岸を歩き続ける。登山で鍛えた足だから、大したことはない。

そして、日本海特有の荒波。
いきなり高くなる波を避けながら、ヒスイがあると言われるI海岸、o海岸をめぐって集めてきた石は100余り。

その中で、「これはヒスイじゃないだろうか」と思う石を選別してみた。
「10万個に一個の確率でしかない」「ほとんど拾われてしまっているので、発見するのは不可能」「どれがヒスイの原石なのか、見極めるのは極めて難しい」 と言われており、専門家ですら、真偽を見抜くのは容易では無いと言われる。

 私が収集した情報で考えた基準は以下のとおり。 

1、緑のヒスイは滅多に無い。白い石を探す
2、重く、つるつるする
3、特有の条痕がある 

フォッサマグナミュージアムに持ち込めば、五個までなら鑑定してくれるというが、そこまで手を煩わせるほどのことでも無い。 どうせ滅多にない石だ。全部違う石に決まっている。

自分で勝手に選別した石。ハンマーで叩いてもビクともしない。
透光性は良くないが、条痕が走り、重い。
条痕の部分が溶けている。硬く、うっすらとラベンダー色
重く、硬い。中にジルコンのような粒を含んでいる。
これは、ネフライトだと思われる。いちおうヒスイの仲間だが、ヒスイ輝石とは全くちがう鉱物だ。
こちらは、ヒスイに似た石だと思われるもの。緑色が入っているのは典型的なロディン岩だ。
これは美しい緑を発するが、違うと思われる。クロム鉄鉱という別の鉱物があるそうだ。
これも違うだろう。
ラベンダー色を帯びているものに光を当てると、良く透過する。
これは、灰色のもの。これも光を通す。
ネフライトに光を当てると、とても美しい緑色を発する。

2019年5月19日日曜日

栂海新道と青海黒姫山

私が青海に赴任してまもなくのころ、黒姫山山頂で展望した飛騨山脈北延主稜線の印象が強烈に残っていた。幸いなことに、私たちの住む当地域には有名無名の山々が数多くあった。そしてそのなかで、朝日岳から犬ヶ岳への感動の山並みにはいまだに登山道がなかった。

小野 健. 栂海新道を拓く 夢の縦走路にかけた青春 (山岳叢書) (Japanese Edition) (Kindle の位置No.275-278). Kindle 版. 

青海黒姫山山頂から、北アルプス主稜線を望む


青海黒姫山は、栂海新道を拓かれた小野健氏にゆかりの深い山だ。そもそも、栂海新道を拓こう、と決断されたのは、この山から望む北アルプス主稜線北部に、まだ登山道が無かったのがきっかけであった。

青海黒姫山は標高こそ低いものの、素晴らしい山だった。今までに登った山でも、1、2を争うほどの景観を持ち、登山という行いの、あらゆる要素を含んでいる、と思った。

標高の低い場所では、爽やかな草原、だんだん登るに従って、白鳥山の山姥洞に向かう道のような、細いトラバース、雪渓のかなり急な登り、ルートファインディング、最後は岩稜歩き、とバラエティに富んだ要素を持つ。
この山に登ることで、「登山とはこういうことなのか」ということが身を持って体験出来る。一つの山に登るだけなのに、これほど状況が変わる山もあまりない。やはり海のそばに屹立する石灰岩の巨大な岩山という特殊な環境がそうさせるのである。

この山の山頂から望む、日本海から白馬岳までの、標高差3000m近い地形を目の前にすると、日本の自然の豊かさや、その神秘に畏敬の念を生ぜざるを得ない。

「あの稜線に、新たな道を拓こう」と思われた小野健氏の思いが、直に感じられる場所である。

大地と天空の間にいる、私たち人間はちっぽけな存在であるが、天と地の境に道を切り拓くことも出来る。
人間の力も捨てたもんじゃないではないか。

2019年5月17日金曜日

クマがいたのかなあ 青海黒姫山

クマのうめき声を聞いて下山された方の記録


下山後、他の登った方々の記録を確認すると、中に「クマのうなり声を聞いたので下りてきた」という記事を発見。

私が登った時にも確かに登山道には動物の排泄物がたくさんあり、林の中から「ドルルルルー」と形容できるような重低音が響いていた。
しかし、大型動物が動く時の「ガサガサ、バキバキ」という音は聞いていない。
大きな動物はカモシカ程度の大きさでもかなり大きな音がするので、この時は鳥みたいな小さな生き物の鳴き声だと思っていた。
ヤマドリは「ドラミング」をする時に重低音を発するらしいので、多分音の主はヤマドリではないかと思う。「バタバタ」というような、羽搏きのような音の後に、その音は聞こえていたので。

しかしながら、記録を書かれた登山者が本当にクマの声を聞かれた可能性はあると思う。
たまたま、私が聞かなかっただけかもしれない。動物の排泄物はネットで調べる限り、たしかにクマのものに似ていた。

猿の声はよく聞いたが、かなり向こうにいた。

クマは出合頭にならない限り、積極的に攻撃を仕掛けてくることは少ないとされる。
向こうも人間に会いたくないはずだ。
しかし最近では十和田湖の周辺で、人を襲うクマも現れているので、油断はできない。

クマ鈴は効果があると感じている。特に高い音のするものが良い。今の時期の単独入山では必須のアイテムだ。

2019年5月16日木曜日

黒姫山の後で、ヒスイ海岸で拾ってきた石

昨日の青海黒姫山登山の後、親不知ピアパークの海岸に出て「ヒスイ探し」をやってみた。糸魚川は世界でも珍しいヒスイの産地で有名だ。
ヒスイは複雑な地質変化によって造られる変成岩で、北アルプス造山運動とも密接に関係している。
青海周辺が巨大プレートの境界に位置しているため、強い圧力がかかっていることが原因で、いろいろな珍しい鉱物が生成されるのだ。
奴奈川石、青海石など、ここでしか発見されていない鉱物もある。
(川の石は採取が厳禁されており、監視カメラが動作しているとのこと。海岸の石は拾っても良い。)

ヒスイは10万個に一個の割合でしか見つからないというぐらい、なかなか無い石だ。
親不知ピアパークには巨大なヒスイの原石が展示されているが、これは盗掘を防ぐために、川の上流から移されたものだという。みたところ、白いゴツゴツした巨大な石にしか見えない。普通の石と何が違うのか???

ヒスイ輝石の色は基本的に白で、味の素の結晶のようなものが見えるのがそうだという。
光を通すか、通さないかは関係無いそうだ。

いろいろ調べたが、調べれば調べるほど、「本物のヒスイ」の定義がわからなくなってしまった。人によって言うことが違う。
ヒスイは緑だという人がいたり、緑の石でもヒスイでないものもあるとか、黒いヒスイもあるとか。。。

とにかく、何がヒスイなのか、さっぱりわからない。
勘で「それっぽい石」を探した結果が以下の2つ。
(インターネットで調べると違う鉱物のようだ。)

表面に結晶が見える。よく光を通す。色は黄色い。中に真っ赤な部分が少し。

ライトを当ててみると、全体的に光を通すが、上の部分が特によく通す。石英か、玉髄(めのう)だろう。ヒスイは丸い形にならないという。しかし全体的に結晶構造なのだが。

これも表面に結晶構造が少しだけある。だが、前の石に比べるとつるつるだ。

ライトを当てると、よく光を通す。

参考までに、本物のヒスイのカットした石と比較してみる。やはりヒスイは緑かな。昔のものなのでかなり質が良いはずだ。

光を当てると美しく緑色に光を通す。やはりこれぐらいのレベルじゃ無いと、ヒスイとは言えないだろうな。


2019年5月15日水曜日

青海黒姫山 アイゼン忘れた 危ない雪渓

本日は1ヶ月に1回の登山の日。朝から好天でラッキーだった。
朝6時出発で、山頂が9時前。
下山はゆっくり降りて、12時半。
6時間ほどの登山だったが、登山口標高が83m。山頂は1221m。標高差1000m以上あり、距離が4kmほどなので、ずっと急登。
この山は全山石灰岩でできている。たぶんアルカリ性の土壌だ。石鹸もアルカリ性なので、とにかくよく滑る(ほんとかな?)。原因は適当だが、普通の山より滑りやすいことは確かだ。
おまけに上部は予想に反して雪渓がしっかり残っており、軽アイゼンぐらいは必要な状況だった。朝早かったので、まだ凍っており、とても怖い思いをした。
久しぶりに撤退を考えた。しかしまだ行けるかもと思ってキックステップを繰り返す。
撤退と前進と五分五分ぐらいの気持ちになったのは久しぶりだ。
結局、なんとか山頂にたどり着けたが。
本日の登山者は1名。関東方面から来られた70過ぎの方。300名山を制覇中だと言っておられた。
下山中に登山道を整備しておられる方に会った。この方は田中陽希さんが4月にここを登られた時に同行された方だった。
このように登山道を整備してくださる方々のおかげで、我々は山に登ることができる。
この方に「登山ノート」を書いていきなさい、と言われたので、下山後、このブログの紹介と共に、登山道の状況を書いてきました。もし見られたら、参考になさってください(5/15現在の登山道の状況を書いてきました)。

青海黒姫山 険しそう

山頂までCT5時間!

だんだん標高を上げると、栂海新道の山々が見えてくる。まだ雪がけっこうある。

金木平。標高800m。ここからが、この山の核心部となる。水場あり。

トラバース気味に急登を進む。石灰岩はとても滑るので、ヒヤヒヤする。

急な場所にはハシゴがある。3本ほど見かけた。こんな場所を整備していただけるからこそ、楽に登ることができる。

急登を登り終えると、西ノ河原という場所に出る。ここからは雪渓が繋がっており、道迷いに注意!ピンクテープを見落とさない!軽アイゼンある人は、ここでつけると良い。私は忘れてしまったので、ここからが正念場だった。

だんだん急になってくる雪渓。キックステップしながら、なんとかしのぐ。朝方は凍っている。しかし、1200m程度の山に、まさかこんなに雪が残っているなんて予想もしなかったよ。

さらに斜度を増す雪渓。道もわかりにくい。木につかまりながら、登はんする。だんだん変な汗をかいてくる。アドレナリンが出てきたことなんて、久しぶり。

上部の急傾斜の雪渓は、かなり危険だった。久しぶりに撤退を考えたが、木が出ていたので、つかまりながら行くことにした。でも、これで良かったのかな?

雪渓の中はルート取りもしにくかった。GWに付いたと思われるトレースをたどるが、不明瞭だ。

一番緊張を強いられた場所。大きなツリーホールの手前は急傾斜。山側は踏み抜くと落ちそうだ。高さは2mぐらいありそうな感じだった。いちかばちか、クリアする。

雪渓の最終地点。雪が割れており、緊張した。

稜線に到達した。ここからは石灰岩の岩稜歩きとなる。かなり痩せているので、両側に注意。

朝日岳?雪倉岳?が見えてくる。非常に素晴らしい風景だ。

黒姫山本体に行く前に鞍部がある。

山頂着。まだ9時になっていなかった。2時間45分ほどで来られたが、全く休憩する場所がなかったから早くなっただけ。糸魚川市内が箱庭のよう。日本海がどーんと目の前に!感動した。

明星山と頚城山塊、海谷山塊、雨飾山方面。眼下には電化生コン太平洋セメントの採石場。

1等三角点と山頂標識。

ギフチョウみたいな蝶が舞っていた。

朝日岳から白馬岳に続く北アルプス主稜線だ。

新潟焼山の奥に、火打山が見える。

記念撮影。日が照ってくると、暑くなってきた。


去年行った雨飾山方面。まだ雪深いな。

2019年5月5日日曜日

気象遭難について

羽根田修『ドキュメント 気象遭難

昔の本ではあるが、上のリンクの本は気象遭難の事例をいくつか集めていて有用だ。
(ただし、一般登山者にはあまり縁のない、冬の剱岳の話が二つ入っているが)

本日も丹沢において、落雷の直撃を受けて亡くなった方がある。

前掲の本にも、落雷の事例が一つ入っている。これによれば、雷は周りより高いものがある場所には、どこにでも落ちるようだ。なるべく身を低くしても、周囲に木があれば、木を伝って被雷する可能性がある。この例では、樹林帯の中にいた時に落雷が起こったという。森の中にいれば、安全だというのは間違いだ。
山中で雷に遭えば、逃げる場所はほとんど無い。だから雷注意報が出ている場合は、山に入ってはいけない。遠雷が聞こえたりした場合などは、とにかく逃げるしかないが、それでも逃げ切れるかどうかは定かで無い。

この本には北海道のトムラウシ山の例も載っていた。トムラウシ山はほんとうに危険な山で、この本に載っている例では2人の死者が出ている。
この本が出版された後、2009年には日本の登山史上忘れることのできない大量遭難事故が発生してしまった。

本の事例も、2009年の事故も、7月に発生している。北海道の山は7月、8月でも降雪するというから、本州の5月ぐらいにアルプスに登るような装備で臨まなければならないと思う。つまり北海道は春山なのだ。

本の事例では、台風の中、登山を続行したことが原因であった。
2009年の事故の場合も、強風と豪雨の中、現状を認識できなかったガイドによる登山の続行が原因であり、8名の死者を出した。

山において、もっとも危険なのが気象の急変だと私は思っている。
なぜなら、道迷い、滑落等は十分に注意すればある程度予防できるが、気象に関しては、前もって十分に予想して準備しておいても、急に変化することがあるからだ。

雷などはいつ発生するか分からない。急な雨や風雪に遭えば体温が下がり、低体温症で簡単に死んでしまう。

大自然は人間に対して一切手加減をしない。ちょっとした不注意で、簡単に危険な状況になってしまうのが山である。

常日頃からの十分な天候チェック、そしてもしもの場合のために、装備の充実を図らなければならない。

2014/01/24 @五箇山高落場山 急に湧いてきた層積雲の堤。この後、間もなく降雪してきた。登りは快晴だったのに、一瞬で天気が変わってしまう山の天気の恐ろしさを思い知った。

2019年5月1日水曜日

天皇陛下と登山

Mt.Chausu&Mt.Asahi.jpg
By E-190 - E-190's file, CC BY-SA 3.0, Link

(那須岳と朝日岳)

天皇陛下は登山のご趣味もあられるようだ。
今まで約170の山に登頂せられたということである。
その山の歴史的な背景を理解せられ、思いを馳せながら登山をされるという。
山を愛するお人柄に感銘を受けた。

日本の山は特に樹林帯が美しい。多くの自然が保存されている世界でも有数の国である。
この美しい日本の山を、後世まで残していかなければならない。

今日は令和の初日。天皇陛下の御即位をお祝い申し上げる。