2020年10月31日土曜日

自然の造ったものに同じものなど存在しない

 


海岸に転がる石ころには、何一つ同じものなど存在しない。
私は石を拾うようになる前は、そんなことすら知らなかった。

「石」というのは、皆同じものだと思っていたのだ。
似た石は確かにあるが、まったく同じものは、まったく存在しない。
たとえコンクリートのかけらであっても、ガラスの破片であっても、自然によって磨かれることで、ぜんぜん別の形のものになる。
丸いもの、角張ったもの、ざらざらしたもの、つるつるしたもの…大きさも、色も、バラエティーに富んでいる。
いろいろなものがまじりあっていて、どう言葉で言い表したらよいのか、まったく分からなくなるほどだ。
そういう存在が、無数にあるのだ。

良く考えてみれば、私たち人間にも、誰一人として同じ人間はいない。
みな少しずつ、違っている。
科学的に同じ存在だ、としても、形や色まで同じであることはない。

宇宙というのは、このように複雑な存在が無数に集まって出来た複合体である。
人間はそれに対して数値で物差しをあて、あれが同じで、これはちがう、と言っているにすぎない。
そんな理想的な存在が、現実にどうして存在するだろうか?
私たちは、じつは「本当には存在しないもの」に惑わされて右往左往しているのかもしれない。

現実そのものは、決して「こうだ」と決定できるものはない。
複雑すぎて、それを正確に言い表す方法がないのだ。

海岸の石ころたちは、私にそういうことを教えてくれた。