親不知、子不知の海岸を歩くのも、これで何回目になるだろうか?最初は「ひすいを探すぞ!」と意気込んで行っていたので、せっかくの絶景を見逃すことが多かったように思う。
この場所はまぎれもなく北アルプスの一部だということに、最近気づくようになった。
海からすぐに山が続いているため、空気はとてもきれい。
海岸を歩くだけで、北アルプスの稜線を歩いている気分になれる。
実際、目の前の海はそのまま、深い海谷まで続き、海岸からわずかの距離で水深1000m近くになる。
ここは地の果てである。
なぜかこの場所に来ると、物悲しい。
実際、昔から多くの別れがこの場所で繰り返されてきた。
生と死の境目が、まさにこの石だらけの海岸である。ここを歩くことは大昔から危険であり、多くの命が失われている。それでも、ひとびとはこの場所を往来し、「どこかを目指して」歩いてきたのだ。
ここを訪れる時はなぜか、鉛色の空が多い。日本海側は曇りや雨の事が多いのだが、その中でもこの場所は、特別雲が多いようだ。
やはり屏風のような北アルプスの、真横だということが関係しているのか?
寂しくて、風が強くて、波が荒い。空は曇り。だが、その中になぜか心を根っこの部分から温めてくれる自然を感じられる。
そんな感じが、私をこの場所に引き付けて止まないのだ。