ひすいの鑑定がいかに難しいか、お示ししましょう。(正確性については保証できません!FMMで見てもらったわけではないので)
かなり上級向けですが、だいたい比重を考慮した問題です。
問題1:右と左のうち、どれがひすいに近いでしょう? |
問題2:右と左の石は、見た目は同じであるが全く違う石である。どちらがひすいを含んだ岩石でしょう? |
問題3:これはひすいでしょうか? |
問題2のヒント:微妙な色の違い、形の違いが分からないと、まったく同じ石にしか見えません。
問題3のヒント:微細な結晶があり、透明度が非常に良いです。しかし比重は・・・
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問題1の答え:黒ひすいの比重は2.9ぐらいが多い。一方、ロディン岩の比重は3.1。したがって左の黒い石がひすいに近いと判断します。ちなみに黒いひすいはオンファス輝石であり、厳密にはひすい輝石とは言えない。グラファイトが混じるひすい輝石は、灰色に見えることが多いです。この場合も炭素の比重は2.26ほどなので、やや軽くなる。
問題2の答え:左側の石がひすいを含んだ岩石。角があり、微妙な緑色をしており、比重が3.2あるのでひすいを含んでいると判断できます。ちなみに石英と思われる右の石は2.5であり、光を通すと茶色です。
目視だけでは、まったく同じにしか見えないと思います。
問題3の答え:ひすいであるとは言い切れない。理由は比重が足りないことです。これほど透明度が高ければ、比重は3以上なければならないはずですが、これは2.8ぐらいです。ただ、コスモクロア輝石の比重は2.64-3.15と、ひすいと比べると少し低い。
緑の発色要因がコスモクロアによるとすれば、これはひすいというよりは、コスモクロア輝石に分類されると思います。しかし、コスモクロア輝石は鮮やかな緑のペイント状の脈を成すことが多く、母岩は黒い。白い石にうっすらと入り込むことがあるのだろうか?
だとすれば、石英か曹長岩に分類されることになります。
だが、この石にはひすいの結晶はしっかりあるので、そうだとも言い切れない。しかも、透過色は非常に美しいグリーンです。この石には石英の特徴である大きな結晶は見られない。
したがって、おそらくひすいになり損ないの曹長岩であろう、と判断できます。曹長岩の比重はだいたい2.6。推測でしかありませんが、一部にはひすいを含んでいるのでしょう。
曹長岩とひすいの分子構造は、ほんの僅かしか違わず、判別はとても難しいです。曹長岩の結晶は大きいと思っていましたが、小さいのもあるのかな?
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結局、比重から判断する限り、ひすい輝石岩の可能性が一番高い、と言えるのが、真ん中の写真の左側の三角形の石だけだ、ということになります。
どうです?かなり難しいでしょう?
以前から書いているように、ひすいの鑑定は目視ではほぼ不可能です。
どうしても本物を知りたければ、フォッサマグナミュージアムで見てもらうか、宝石鑑定に出すかするしかありません。
私はそこまで本物にはこだわらないスタンスで石拾いを楽しんでいるので、こんな検定には意味がありませんが、自分の中で結論を出しておきたいので、あえて書いてみました。