富士登山ニコ生中継滑落事故
栗城史多氏がエベレスト登山中に亡くなる
10/28、富士山をニコニコ動画で生中継しながら登っていた人が滑落した。
今日、遺体で発見されたという。ご冥福をお祈りする。
この事故は、エベレストで亡くなった栗城史多氏の事故と大きく一致する部分がある。
両者とも、山をインターネットで中継しながら登っていたのだ。
冬の富士山(今の時期は完全に冬山である)は危険なことで有名である。
独立峰であるゆえの強風と、アイゼンの歯も立たないほど凍結した斜面。
特に今回は何日か前の雨のために、凍結が激しかったと思われる(動画でもその様子が分かる)。
滑落している時に写っているのは、ストックである。氷の斜面を、ピッケルを刺さないで登ったのだろうか?
アイゼンを使えば、氷の斜面でも、登ることだけはできる場合がある。しかし問題は下山時。
滑落したのは下山時のように見える。たとえアイゼンで登って来られたにせよ、下山時は滑って下山できなくなることもある。下りは大変滑りやすく、危険だ。
このような氷の斜面では、一旦滑りだすと人間の力では止めることが、できない。
このような危険な状況の山に、なぜ登ったのか?
彼をそこに向かわせたのは、何だったのか?
インターネットで情報を発信すると、注目を浴びたりすることがある。
登山系SNSやYouTube、ニコニコ動画等には、動画を評価する「いいね」ボタンがある。
以前にも別の場所で書いたことがあるが、このボタンこそ、発信者を迷わせる元凶である。
注目を浴びるために、いいねをもらうために、とんでもなく危険なことでもやってしまう。
一種の「いいね」依存症ともいうべき状況に、発信者を追い込んでしまうシステム。
いったんそれにはまってしまうと、それを止めることは、まさに氷の斜面を滑落する人を止めるのと同じように難しい。衆人の注目を浴びる行いは、一歩誤れば非常に危険な行為なのだ。
女の人が美しくなりたいために何十回も整形手術を繰り返し、生命の危険に陥るように、そして、アルコール依存症患者が、アルコールによって身も心もボロボロになるように、それはハマった人の命を奪ってしまうことがある。
これは何をするにしても、注意しなければならないポイントだ。
たとえそれが仕事や、慈善事業であったにしてもである。
何事も、「ほどほどに」しなければならない。
どんなに楽しい事でも、これ以上はやらない、明らかに命を危険にさらすことはやらない、という基準を、自分の中に作っておかなければならない。たとえそれが世の称賛を浴びるような善行であったとしても、である。
人生は、死んでしまったらそこで終わりであろう。
いったい、何が残るというのか?
また、登山がイヤになる事故が発生した。
世間の人も思っているだろう。「なぜ山になんか登るんだろう」と。
無謀なことをする登山者が出るたびに、ほんとうに登山を楽しみにしている人や、ほんとうに山を愛している人たちが悲しい思いをするのだ。