2019年10月22日火曜日

即位礼正殿の儀 八尺瓊の勾玉

ヒスイ

今に伝わらず、失われた風土記である「越後国風土記」。
この中に、「八坂丹(やさかに)の玉」に関する記述がある。
天皇が重要な儀式の時に必ず持参する三種の神器の一つである「八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)」の「八尺瓊」を、ここでは「八坂丹」と表記している。

当時の日本語は文字を持たなかったために、漢字の音を当てた。それが「万葉仮名」である。従って、漢字は発音を表しており、漢字自体に意味はない。

この八坂丹の記述について、古越後国風土記逸文を見ると、以下のようになっている。

「越後国風土記曰、八坂丹玉名、謂玉色青、故云青八坂丹玉也」

(越後の国の風土記に言う、八坂丹とは玉の名である。玉の色が青いということを言うために、青八坂丹の玉と言うのである。)
(一番理解できる以下の著の解釈を採用した。井上通泰『上代歴史地理新考 : 南海道 山陰道 山陽道 北陸道』、昭和16年、三省堂)

これによれば、八尺瓊の勾玉の色は青い、ということになる。

古代は青と緑の区別はあまりなかった。新緑のことを「青若葉」と言ったりしていた。
現在ですら、信号機の色が緑であるにもかかわらず「青信号」と言う。

玉の色が青い、ということは、ヒスイか、ネフライトか、それとも石英のようなものか?

それはともあれ、ここで重要なのは古い越後国風土記に八坂丹の玉の話が出てくることである。

これは昔、八坂丹(やさかに、の「やさか」とは弥栄のことであり、八坂丹とは「栄える力を持つ玉」を意味するだろう)の玉が、新潟県に産したことを示す。

そして、新潟でこのような玉を産する場所といえば、糸魚川以外に考えられない。
しかも、この周辺では縄文時代のヒスイ加工場跡が出土したり、実際にひすいやネフライトの勾玉が出土したりしているのだ。

糸魚川のヒスイかネフライトが、皇室の重要な宝物になっていることは何を意味するのか?

天皇ですら、実物を見ることを禁じられているという「八尺瓊勾玉」。
平安時代に冷泉天皇という方が、実際にご覧になろうとされると、煙が出て見えなかった、という伝説もある。

言葉の意味からすれば、天皇家のますますのご発展をもたらす玉である。
今日は即位礼正殿の儀が行われ、内外に広く天皇の御即位を示される日。

皆でお祝いしよう。