昨日走った僧ヶ岳登山口に続く林道の、こちら側とは反対側の途中で、当時のオウム真理教に入信していた若者を救出しようとされてた横浜の弁護士、坂本堤氏の妻の都子さんが発見された。
その日が、1995年の9月6日。
今から24年前のことである。
昨日は特別意識して僧ヶ岳林道を走ったわけではないが、心のどこかに、あの事件の記憶があったのであろう。それが私をここに向かわせたのかもしれない。
宗教を隠れ蓑にし、悪逆非道の限りを尽くしていたオウム真理教は、テレビ出演をきっかけに勢力を拡大してゆく。
それに伴い、オウム真理教はますます手に負えない宗教になり、信者を拉致したり、暴力の限りをつくすようになっていった。
違法薬物を使用した儀式を批判した坂本弁護士を、一家もろともオウムは殺害する。
まことに痛ましい、憤りを感じる、悲しさの限りを尽くしても悼（いた）みきれない、出来事であった。
オウムの幹部たちは、坂本弁護士を新潟県の大毛無山、長男を長野県の湿地帯、そして都子さんをこの地に遺棄した。
狂気に取り憑かれた教祖は昨年死刑になり、教団幹部もほとんど死刑になった。
だからといって、この事件は終わったわけではない。未だに教団の後継団体が存在し、インターネット上にもこの事件があたかも陰謀であるかのように書かれているものが存在している。
狂った宗教が残すものは、これほどまでに大きいのである。
24年経過しても、未だに洗脳の解けない信者たちがいるのである。
だからこそ、今の瞬間を大切にしてほしい。
この現実の社会を、普段通りに、当たり前に生きさせていただけることに感謝してほしい。
死後の世界など、あるものか。超能力などあるものか。
それらは、人間の脳が、作り出した幻だ。
人間の心に潜む、欲望ともいうべきもの、それが罪もない人を巻き込み、とりこにし、こんな悲しい事件や、最後には戦争すら引き起こす。
それらはすべて、人間の心からうまれたものだ。
だからこそ
当たり前の意識を、大切に守ってほしい。あたりまえの日常を、どうかつまらないなどと言わないでほしい。
人間は何もしなくても、そのままですばらしいのだ。
この上、何をそこに付け加えるというのか。
何も付け加えない心を、どうか大切にしてほしい。
そうすることが、悲しい事件を再び起こさないために、最も必要なことだ。
周りの人々を大切にしてほしい。親や兄弟を大切にしてほしい。
あなたが今、いる場所を大切にしてほしい。
最後に、坂本弁護士が発見された新潟の大毛無山山中にある慰霊碑の文を引用させて頂いて、終わろうと思う。
もう2度と、こんな悲しい事件が起こりませんように。
----------------------- 以下引用
弁護士の使命は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することにある。
それ故に正義と人権を踏みにじろうとする者にとって、弁護士の献身的な活動は脅威であり障害となる。
坂本堤弁護士（横浜弁護士会所属）は、オウム真理教に出家させられた子供らの救出活動及びその反社会性を告発する活動に取り組んでいた。その最中の一九八九年一一月四日未明、オウム真理教幹部らによって、その家族ともども自宅にて殺害された。
当初から、この事件はオウム真理教による犯行ではないかと強く疑われていたが、同教団に対する捜査は遅々として進まなかった。一方、全国の弁護士は、坂本弁護士の正当な業務活動を妨害するために同弁護士一家が拉致されたとみて、日本弁護士連合会、各地弁護士会、「坂本弁護士と家族を救う全国弁護士の会」等を中心に大規模な救出活動を展開した。
救出活動は、市民の中にも広がり、「坂本弁護士と家族をさがす会」の活動、署名運動 ･ 請願運動、全国キャラバンなどにより、事件は全国的な関心事となっていった。
事件発生から五年を経た一九九五年三月、世界を震撼させた地下鉄サリン事件が発生し、その直後から、オウム真理教に対する大規模な強制捜査が開始された。その過程で、坂本弁護士一家事件も、オウム真理教による組織的犯行であることが明らかになった。
同年九月六日、坂本弁護士（死亡当時三三歳）はこの地から、妻都子さん（死亡当時二九歳）は同日富山県魚津市の僧ヶ岳山中から、長男龍彦ちゃん（死亡当時一歳二ケ月）は同月一〇日長野県大町市の湿地帯から、それぞれ発見された。
一家の無事救出が果たせなかったことは、私達にとって痛恨の極みである。しかし、坂本弁護士が先駆的にオウム真理教を追及することがなければ、もっと多くの犠牲者が出たであろう。
そして何よりも坂本弁護士一家の救出活動を通じ、弁護士活動への暴力的妨害は背後にある国民の基本的人権に対する侵害であり、司法制度ひいては民主主義への挑戦であるという共通の理解が、弁護士と市民の中に根を下ろした。
私達は、坂本弁護士がその使命を命懸けで遂行し、その志半ばで倒されたことを永く忘れることなく、その遺志を引き継ぐことを誓って、ここにメモリアルを建立する。
坂本弁護士一家は、五年一〇ケ月もの間三ケ所に離れ離れにされていたが、今は、ともに鎌倉円覚寺境内松嶺院に眠る。
日 本 弁 護 士 連 合 会
新 潟 県 弁 護 士 会
横 浜 弁 護 士 会
坂本弁護士と家族を救う全国弁護士の会
