2024年12月24日火曜日

ほとんど登れない年



今年は数回しか登山しない年になった。
忙しいことが多く、登山にも海にも行けなかった。

こういう状況でなかった今までが単に暇が多かっただけなのかも。
また、年々気象条件が厳しさを増しており、気持ちよく登山出来たり、海岸に出られたりすることがほとんどなかった。

自然に呼ばれず、人間に呼ばれている感じがする。
まあ、それはそれで良しとしなければなるまい。

だんだん山が遠くなっているようだ。
行きたいと強く思えば思うほど、遠ざかっているような気がする。
しかし、登山はやめたくない。

素のままの大自然に身を投じる行いは、やってみた者でなければ分からないと思う。
なんでそんな危ないことをするのか、と人は言う。
しかし、ずっと仕事をしていても、家にいても、病気になったり死んだりするだろう?

息が詰まりそうな人間社会を飛び出して、無限の広さを見に行きたい。
車で登るのではだめなのだ。やはり自分の足で行かないと。

山が恋しい、とは言わない。なぜなら、そこは危ないからだ。
では、なぜ行くのか?矛盾じゃないのか?と人は言うだろう。
愚かなやつだと。
でも、その「愚かな」行為が、かけがえのない体験と健康を与えてくれるのだ。

2024年12月12日木曜日

十二様 山の神

 


日本の有史以前すなわち、古代の事を述べると憶説になる場合がほとんどだ。
やはり決定的な証拠が存在しないからである。論理実証主義である「科学」では、何らかの考古学的証拠に基づいて、この時代にはこんなことがあったのではないだろうか、と想定する。有史以前の歴史を示すものは、遺跡や遺物である。これらから、考古学者は当時の暮らしがこのようなものであったのではないだろうか、と推定するのである。
また、伝承や口伝資料、古文書に基づいて古代の出来事を想定する方法もあるが、これは本当に事実を伝えているのか、疑わしい場合もある。事実が歪曲されたり拡大解釈されていることは普通にあるからだ。
口伝や伝世史料を用いる場合、それによって論を進めると、矛盾が生じる。
それはもとの史料自体が、当時の人びとの様々な思いを述べているものだから、当然である。
この場合は、とかく思考が脇道に入りやすくなる。ややもすれば、著者の思いを述べただけ、ということにもなりかねない危険性を含んでいる。
ともかく、それらの史料から、山の神がなぜ「十二様」と言われるのかを論じた書物に、吉野裕子『山の神』がある。
これによれば、山の神は陰陽五行説によって、イノシシであることがわかる。すなわち、もとの山の神は蛇であったが、これを陰陽五行の図に配置し、これの正反対側に位置する動物は何かを調べるとイノシシである。イノシシは十二支の最後の動物なので、十二という数が導かれる。なぜ反対側に配置する必要があったのか、と言うならば「以前の山の神とは区別しておく必要があったから」だ、という。
また、『易経』に説かれる坤(こん)は、全て陰を表すから女性を意味する。これが山の神は女性である、という根拠になる、と。
確かに、修験道を実践した山伏、それ以前の陰陽師などは中国から伝わった陰陽五行説に対する知識をもっていた、と思われる。
これらの人々が、山に住んでいた人たちの呪術的な嗜好を満たすために、祭祀を伝えた可能性は大いにあるだろう。
十二という数がなぜ現れるのか、これ以外に説明は難しいと思う。
ただ、これも一つの説であり、実際は縄文時代の大湯環状列石にみられるような日時計の構造が、十二という数の根拠になりえる可能性もある。
古代の事は想像にしかなりえない。あまりにも現代とは時代が遠すぎるからである。
それについて、何か確実な事を言おうとすると、想像が尽きないことになるだろう。
まあ、それが面白いのだ、と感じる人が存在するからこそ、民俗学や歴史学が存在するのだろうが、私自身はそれらに対して、あまり共感はできない。面白いなあ、とは思うけれども。

山の神の祭りは11月7日とか、11月23日などにも行われるが、特定の月の12日の場合が多いという。
特に12月12日が山の神の日である、とされるのも、この陰陽五行説に従う限り、納得できる。

山の神の日には、決して入山してはいけない。
山に入るとけがをしたり、戻ってこれなくなったりなど、いろいろな祟りを受ける、と言われている。

2024年12月1日日曜日

能登半島西方沖地震

 
出典:産業技術総合研究所(2024) 活断層データベース 2024年8月23日版. https://gbank.gsj.jp/activefault/

11月26日以降、能登半島西方沖地震が頻発し、現在までに有感地震で100回以上起こっている。
産総研の活断層データベースを見ると、地震が起こっている領域に断層を示す標識は掲載されていない。
能登半島北の断層帯の続きであるようにも見えるし、そうでない、新たな知られていない断層にも見える。
いずれにせよ、この領域で活動が極めて活発であるということである。

今後、どうなっていくかは分からないが、能登半島で大規模な地殻変動があったばかりであるので、心配である。
震度5以上の地震は、今のところ約半年に一回の間隔を開けて起こっている。
そろそろ活発化する時期である。
今回の地震が、一連のものであることを祈るばかりであるが、仮にそうでなかった場合、北側の断層の続きで、また大きな地震が起こる可能性があるのではないだろうか?

まだまだ安心できない状況である。

2024年11月25日月曜日

宝達山 紅葉散歩

 仕事帰りの寄り道で、宝達山へ。
快晴だった。紅葉は終盤。
今年はいろいろと事情があり、あまり山には登れなかった。
宝達山のように、車でかなり上まで行き、ちょっと歩いて登る程度であれば、それほど問題ない。
しかし、いつ来ても宝達山はすばらしい。
山の上から海が見えるというのが良い。
眺望の良さがこの山の唯一無二の特徴だ。
今年の無雪期登山の締めは、宝達山となったのであった。

山頂へ向かう途中のすばらしいカエデ

最盛期

山頂より

河北潟



2024年11月19日火曜日

外資系企業による鉱山再開発(反対)


今の技術なら、見つかるはずだともくろんでいるらしいが、12年探鉱してまだ見つかっていない。企業は「鉱山法が改正された」と言っているらしいが、本当だろうか?
もし、本当だとしたら、なぜこんな事を海外の企業に許可するのか?まったく理解に苦しむ。
鉱山は日本の国有財産ではないだろうか?なぜ外国に掘らせるのか?

外資系企業が試掘した後はそのまま放置されているという。だとすればヒ素などの有毒な物質によって鉱毒被害が起こる可能性がある。
かつての神岡鉱山の鉱毒事件を思い出してほしいものだ。
甚大な被害によって、数えきれないほど多くの人々が苦しんだ。またそれを繰り返すのか?

外資系企業は、「日本は火山が多いから、金もある」と言うが、たとえ金鉱石を発見したとしても、それだけでは済まない。金鉱石には有害な不純物が多く含まれており、それを環境に影響を与えないように精錬する技術が無いと、汚染物質が環境中に放出され、取返しがつかないことになる。

このような無謀な試みによって、日本の豊かな国土が荒らされることは許しがたい。
今すぐ、中止していただきたい。

2024年11月16日土曜日

悲しみ


 今までやっていた「アウトドア活動」ができなくなって、とても残念だ。
少しでも時間を見つけて行きたい、続けたいと思っても、「条件」が許さなければ、できない。何事もそんなものなのだろうが。

外に出ることは、いろいろな条件が整わないとできないことだ。
そもそも、人生そのものが、条件の複合によって生じてきているものに他ならない、と思う。
その条件を「自分」が何とか整えよう、と思っても整わないことの方が多いのだ。
「思い通りに行かない」それが人生だと言えるだろう。

複数の原因が奇跡的に整った時にのみ、何かができる。
整わなくて、出来ないことは「悲しみ」である。
しかし、それを受け入れていくことの方が、ずっと多いじゃないか?

2024年11月6日水曜日

暗所で蛍石を撮影

暗所で別のカメラを使って、蛍石の蛍光を撮影。
すると、内部の筋が浮かび上がってきた。
たぶん割ると正八面体の結晶が出てくるのだろう。

右寄りに「×」の形が現れてきた。これはiPhoneのカメラでは色が潰れてしまって、見えなかった。

直接紫外線を当てなくても、漏れてきた紫外線だけでも十分蛍光するようだ。

 サンプルは宝達山の蛍石であるが、太陽光で見ても、美しいグリーンである。
昔は自形結晶のものが採掘されていたらしい。金沢大学に見事な結晶クラスターが展示されているという。
戦時中、鉄の精錬に使ったのであろうか、盛んに採掘されていたらしいが、今では採掘され尽くして閉山している。
また、この山では江戸時代、金鉱石を採掘していた。その跡が残っている。
花崗岩の山であり、石灰岩もあることから、花崗岩と石灰岩の接触部に鉱脈が発達したと思われる。しかし、金鉱石は泥岩の中にも産するらしいので、相当複雑な地質構造をしている、と思われる。
蛍石のある所には、たいてい金属鉱脈が存在する。
蛍石はたいていは脈状で見いだされるので、フッ化水素を含んだ恐ろしく反応性の高い熱水に金属元素が濃縮されて、それが塩基性の岩に触れて、金属元素が析出するのであろう。
そのメカニズムは科学の専門家でないからわからないが、大地の下で起こっている激しい反応を想像するにつけ、感嘆を禁じ得ないのである。

2024年10月30日水曜日

宝達山の蛍石(オークションで入手)

 オークションで「宝達山で採取された」という蛍石を入手。
何度も宝達山には登っているが、蛍石は見たこともないので、興味があった。
とてもいい色で、この間買った母岩付き蛍石とよく似た雰囲気の薄緑色。
これも微量の希元素(セリウムまたはサマリウム)を含んでいるのであろう。
最近、蛍石にはまっているな(ひすいはどうなったの?笑)

大変美しい色の脈状蛍石。自形結晶のものもあるらしい。

紫外線を当ててみると、予想通り、強蛍光。これは蛍光するな、と思ったので入札したのである。

すばらしい青色だ。iPhoneのカメラで色がつぶれる、ということはとても蛍光が強いことを意味している。iPhoneのカメラは、この色を表現できず、青一色として解釈してしまうからだ。

満足。また別のカメラで撮影してみよう。

この青色が好きだ。この世の物とは思えないほどの美しい色なんだよね。

光る石はいいよね。
私の人生はあまり華やかではなかったので、輝く石を見ると羨ましく思う。
いつも地面に埋もれて目立たないように生きてきたから。

2024年10月28日月曜日

モービルオイルが手に入りにくい

 

出典:Mobil 1 motor oil - モービル1 - Wikipedia

エンジンオイルの交換に行ったら、いつも入れているモービル ハイマイレージが品薄状態とのこと。
理由を調べると、エクソン・モービルと国内工場との契約が切れるので、もう国内では作れないから、らしい。
このオイルを入れるようになってから、エンジンの調子が良く、ほとんどトラブルに巻き込まれなくなった。
また燃費もよくなって、いつもは400kmぐらいで空になる燃料も、550kmぐらいは走れるようになっていた。非常に優秀なオイルだなと感じていただけに、生産中止は痛い。
やはり国内で生産していたのか。日本製は優秀だなと改めて思った。
これからは、海外(中国?)で作ったオイルを入れなければならないだろう。
エンジンが正常な状態を保てるかどうか、わからないが、しかたがない。
山に行ったり、僻地に行ったりする自分にとって、自動車のエンジントラブルはぜひとも避けなければならないことだ。
生産中止はとても残念なことだ。ほかに代替を探さなければならないが、これに匹敵するものが、果たしてあるのだろうか?

2024年10月26日土曜日

赤銅鉱が入っていた

 先日買った蛍石のサンプルの中に、いろいろ混じっているように見えるので、詳しく撮影してみた。
何やら見たことのない赤い鉱物が付着している。他に似た色の鉱物が無いので「赤銅鉱(キュプライト)」であろう、と考えている。
これは酸化銅(Ⅰ)(=銅のサビ)であり、自然銅と一緒に出ることがあるらしい。

赤い鉱物は赤銅鉱であろう。金色の鉱物は黄銅鉱で間違いない、と思っているのだが(金色のが自然銅である、と書いている人もいるが、これはどう見ても黄銅鉱にしか見えない)。黒くてきらきらしているのは「閃亜鉛鉱」だと思っている。白い石英のようにみえる鉱物は、紫外線で強く蛍光するので蛍石で間違いない。謎なのは、蛍石に赤銅鉱が混じっているように見えること。こういう出方もするのだろうか?

別の場所にも赤銅鉱らしきものを発見。これは表面に金色が付いているから、黄銅鉱と一緒なのかもしれない。緑っぽいものは、銅の酸化物であろう。茶色の部分は蛍石に銅がしみ込んでいるように見える。雰囲気的にこのリンク先の標本燐銅ウラン鉱の乗ったこのリンク先の標本に似ている。

何でもやってみるのがいいかもしれない


 登山を始めた時は、これほど長く続けられるとは思っていなかった。
デスクワークだったので、「腰痛対策に筋肉を鍛えよう」ぐらいの気持ちでしかなかった。あと、気が滅入ることが多かったのもある。

頭でどれだけ考えるより、「何かやってみる」方が良い、と実感させられた。
実際に山に登れば、写真やSNSで得られる情報とは比較にならないほど、多くの経験をする。いや、写真がそもそも「絵空事」であることを、はっきり自覚することができる。
どれだけ文章でその素晴らしさや、辛さ、達成感などを書き綴っても、けっして「そのもの」ではありえないのだ。
これははっきり言える事である。

これは、何をするにしても同じだと思うのだ。
想像していたより、ずっと良いこともあれば、つまらないこともある。
いずれにせよ、「実際にやってみないとわからない」のである。

ひすい拾いにしても同じである。ひすいがいかに拾えないものであるのか、そして海岸に落ちている石が、いかに品質の悪いものであるかなどは実際に行って体験してみないとわからない。

だから人生において、頭の中だけで考えて「これはだめだ」と思うのは良くない。
やってみて、とてもできない、と思えば無理にやる必要はない。
ただ、それを判断するためには「とにかくやってみる」ことが必要だと思う。
でなければ、どうして判断できるだろうか?

決して登れない、と思っていた山に登れたこともあれば、
こんな石は拾えない、と思っていた石を拾ったこともある。
逆にひどい目にあったり、危険な目にあったこともある。
人生、寝ていても死ぬときは死ぬ。
あまり恐れないで、自分がやれることをやってみる、ということだと思う。

なんだか「うんちく」を垂れているみたいで嫌な文章になってしまった。
しかし、インターネットの世界では得られないものが、実際現実世界で何かをやってみる事で得られることが伝われば、いいなと思ってこの文を書いてみた。

2024年10月18日金曜日

スカルン鉱床は大地のエキス

 スカルン鉱床

スカルン鉱床の説明は上記リンクがわかりやすい。
要するに、地下から上がってきたマグマ、熱水など、高温の物質と、堆積岩である石灰岩が接触する。酸性の熱水の中には地下深くに存在する金属などが含まれており、それがアルカリ性である「石灰岩」と接触することで中和し、その中に金属が取り込まれた鉱脈だ。
自分の住んでいる所に近い神岡鉱山が代表的な例である。
接触した石灰岩は変成し、「結晶質石灰岩(大理石)」になる。
神岡鉱山の場合は、接触される側の石灰岩がすでに結晶質石灰岩になっており、それが火成岩由来のマグマから発生した熱水に接触することで鉱床を作っている。
金属は火山の硫黄分と結合し、硫化物として沈殿することが多い。
簡単に言えば「マグマの中の金属が、石灰岩の境目に溜まっている」タイプの鉱脈なのだ。

飛騨帯に広く分布する結晶質石灰岩の例。透輝石や石墨を含んでいる

亜鉛を含む異極鉱と思われる鉱物。茶色の部分は磁硫鉄鉱

スカルン鉱床に含まれる金属元素は種類が多く、神岡鉱山の場合は亜鉛が主であった。
神岡鉱山の周辺には、金銀銅はもちろん、石墨や鉛、モリブデン、そして有害なヒ素やカドミウムを含む鉱脈が点在していた。
現在ではこれらの鉱山はすべて閉山されている(現在立ち入りが禁止されているところがほとんど)。神岡鉱山は奈良時代の頃からすでに採掘されていたほど歴史が古く、日本の鉱業史の中でも欠くことのできない重要な鉱山であった。

スカルン鉱床が面白いのは、そこに含まれる多彩な鉱物、金属だけでなく、地質学的な特異性を持つこと。それは日本国土の成立にも関わる大地の運動の歴史を刻んでいる。
大陸から分裂した岩石に含まれる変成した石灰岩に、火山活動で湧き上がってきたマグマが接触し、このような鉱物が生まれるのである。不思議なことだな、と思う。

2024年10月17日木曜日

金剛堂山 あとどのくらい登山できるか

 先日、金剛堂山に久しぶりに登ってきた。
事情があって、大急ぎで下山しなければならなくなったが、急激に天候が悪化する前だったので、ちょうどよかった。
朝6時半開始で、お昼前には降りてこられた。

あとどのくらい登山できるか、わからないけれども、やはり登山はすばらしい。
条件の許す限り、機会を見つけて続けたい、と願っている。

紅葉はもう始まってもおかしくないのだが、葉が枯れてしまっている。今年の夏の異常な高温のため、環境が変わっているようにも思う。年々、この傾向が強くなってきている。写真は向かいの白木峰

草紅葉というよりは、枯れている

この風衝草原が好き。丸い山は前金剛。この日も風が結構強かった。

中金剛(1650m)から、両白山地。この後、雲に覆われてしまう

奥金剛(1616m)

風が強く、雲の流れが速い


この時点で9時40分ぐらいなので、まだ天気が崩れていない。おにぎりを2個食べて、早々に下山を開始した。

2024年10月16日水曜日

事情により


事情により、今後あまり登山に行けなくなるかもしれない。
昨日の登山の最中に、携帯が鳴り、のっぴきならぬ用事が発生したことを知った。
急いで下山して、なんとか用事を済ませた。

最近ほんとうに忙しくなった。
歳を重ねるにつれ、責任の重いことが増えてくる。
どうしようもないのだけれど。
今まで登れていたのは、本当に幸運の連続であった。

ブログは更新していこう、と思う。
タイトルも、「石のように」という名前に変えた。
これまで以上に山の記事も書けなくなってくるのではないか、と思う。

2024年10月14日月曜日

死ぬときに見る光

蛍石の蛍光を見ていると、
もうおれは死んだと小十郎は思った。そしてちらちらちらちら青い星のような光がそこらいちめんに見えた。
「これが死んだしるしだ。死ぬとき見る火だ。熊ども、ゆるせよ」
人が死ぬときには、形容しがたい、目がつぶれるような、強烈な光を見る、という。
『チベット死者の書』などにも、その光の事が書かれている。
この書では、青、黄、赤、緑、白の5色の光が、死者の前に次から次へと現れる。
それに従って行くと、もう二度とこの世に戻ってくることはない。
『今昔物語』などにも、臨終儀礼に「五色の糸」「五色の幡」の話がある。

実際「臨死体験」をして、この世に戻ってきた人の話では、このような光は実際に見えるようだ。(戻ってきた、ということは、その光についていかなかったのであろう)

特別な脳内物質が分泌されることが原因らしいが、実際に見た人の話だと「どのようにも、説明できないし、説明することに意味は無い。あなたにはわからないから」だそうだ。
生きている人間には、関係ない、という意味だと私は受け取った。

Argonne National Laboratory - originally posted to Flickr as Advanced Test Reactor core, Idaho National Laboratory Uploaded using F2ComButton

青い光で有名なのは、「チェレンコフ放射」の光である。光は真空中を進む時には、光速度(299792458m/s。秒速約30万キロメートル)で進むのであるが、水の中ではこのスピードが75%ほどの速度になってしまう。
しかし、核分裂で生じた荷重電子は、その中を真空中で光が進むのと同じスピードで進む。これによって水の電磁場が一時的に乱される。電磁場はすぐにもとに戻ろうとするが、その時に光を発するのが、「チェレンコフ放射」の原理らしい。
あたかも、蛍石が発光するときに、紫外線や熱で分子が励起されて、元に戻ろうとするときに発光するのに似ている。
平常の状態が乱されて、元の状態に戻ろうとするときに、光子を発するのだ。


これは、「アントラニル酸(麻薬原料指定されている)」という物質を持った細胞が死の瞬間に壊されて、中の物質が出てきて蛍光するらしい。チェレンコフ放射や蛍石の蛍光とは、全く原理が違うようだ。
この現象は死の瞬間が一番強く、その後すぐに消える。
(死の瞬間の苦しみを、アントラニル酸が消すのだろうか?)

しかしながら、「何かが元に戻るときに蛍光を発する」という点は、共通している、と感じる。世の中は不思議だ。
たぶん、人間も死ぬときに同じような光を発するのであろう。
「死ぬときに見る光」は、これなのかもしれない、と思った。

2024年10月12日土曜日

一番光るのはやっぱり蛍石

スタジオジブリの「天空の城ラピュタ」で、ポムじいさんが
「すまんが、その石をしまってくれ。わしには強すぎる」と言っているシーンの石が、蛍石だという説がある。
なぜなら、青い光を放っているし、暗闇で蛍光するし、最後のシーンに出てくる、ラピュタの心臓部にある「正八面体」の結晶が、そっくりだから。
ただし、作者本人が認めているわけではないので、あくまでも巷での想像である。


実際、蛍石との共通点は多い。紫外線で照らすと、美しい、青い蛍光を発する。また、個体によっては、燐光(自発的に光る)を示す。熱を加えると、光を発する。この光が、劇中の飛行石に似ている。蛍石がモデルであろう、と思われて当然であろう。
 

このカメラは写りが悪い。iPhoneのカメラはもっと良くない。本当は、「この世のものならぬ」美しい青色光を放っている。


これなどは、実際はもっと美しいのだが、写真に撮ると、どうしても色が出ない。本当はもっと透明感のある、今までに見たことのないような、美しい青色を放つ。

蛍石は紫外線で蛍光させると、どんな鉱物よりも美しい。
しかし、それを撮影する技術は、かなり高度なようだ。
やはり、紫外線という、目に見えない光によって光っているからであろう。
すばらしい輝きを、お見せできないのが残念である。

いろいろな石で蛍光を試す

 持っている石に紫外線を照射してみる。

透輝石、もしくは透閃石と思われる石。強く蛍光。

奴奈川石を含む苦土リーベック閃石曹長岩。バリウムに反応しているのか、奴奈川石が黄色味を帯びた白い蛍光を発している。

やや緑味を帯びたオパールの蛍光

透輝石を含む石。白く蛍光している。

サンダーエッグに照射してみると、今まで見えなかった層状の構造が見える。白く蛍光している?とまではいかないかもしれない

上で蛍光しているのは、タオルで拭いたときにタオルの破片がのこって、それが蛍光している。タオルには蛍光染料が使われているのである。石は緑味を帯びた弱い蛍光。

短波紫外線だと、もっと違う色になることもあるらしいし、短波でしか光らないものもあるのだが、短波紫外線は、長波よりもさらに危険。
光を見てしまったせいで、網膜にダメージを負った例があるらしい。
怖いので、短波紫外線についてはキャンセル。
短波よりももっと短い電磁波は「X線」と言われる。X線に近ければ近いほど、体への影響も大きい、ということらしい。

2024年10月11日金曜日

紫外線ライトで蛍石を光らせる とても強い蛍光

 「蛍石に紫外線を当てると、ものすごくきれいだ」と聞いたので、紫外線LEDライトを入手。紫外線ライトは、直接見ると目に激しいダメージがあるので、UVカット眼鏡と紫外線カット99.9%の雪山用ゴーグルを装着し、蛍石に照射してみる。
このライトは1灯式で、波長は375nm。青色LED開発者の中村修二博士がいた日亜化学工業のものである。発売は大阪のコンテック。物は確かだ(あやしい品物ではない)。
よく、「宝石用は365nmがきれい」と言われているが、波長が短ければ短いほど、紫外線としては強力になるらしいので、いきなり冒険はしない。

※ 警告 このページで使用している近紫外線は可視光と比較して約10倍のエネルギーを持つ光です。(短波紫外線になると、エネルギーは100倍ぐらいになります)普通のランプより10倍明るい電灯を想像してください。とても直視できるものではありません。危険なので決して紫外線ランプの光源を見ないでください。

危ないから決して光源を直視するな、と警告されている。ライターの火と同じぐらいの注意が必要である。

まずはルビーに照射。真っ赤に蛍光した。コランダムは赤く光るらしい。

オパールはうっすらと緑色

これはグラス越しでは緑色に見えたのだが、iPhoneのカメラでは、激しく青白く蛍光している。光っている鉱物はなんだろう?オパールだから、方解石ではないだろう。

これは蛍石を含んだ石

蛍石は青い蛍光を放つのが特徴

紫色も混じるとても強い蛍光だ

---------------------------- 糸魚川の海岸で拾った石

ひすいを含んでいると思っている石

紫外線照射によって、「クロム透輝石」の可能性が高いことが判明(つまり、ひすいじゃない)。クロム透輝石自体は、かなりレアな石で、北海道のものは「日高翡翠」という名で呼ばれた。これも紫外線のおかげ。


可視光では全く分からなかった、白いライン。透輝石は白く光るという。そして、下の方に赤く光る鉱物

赤く蛍光する鉱物。長波で赤く光るのは、クロムイオンを含んでいることを意味する。ただし、コランダムではなさそうだ。

透輝石とクロム分があるということは、クロム透輝石か?あるいは菫泥石か?コスモクロア?

鉄分、銅成分を含むものは、全く光らない。
ゆえに、はっきりひすいとわかるものは、光らないものが多い。
ただし、石目が白く光るものがある。

紫外線を照射してみることによって、いろいろとわかることがある。
ロディン岩は透輝石、ベスブ石などでできているので、白く光ったらロディン岩なのかもしれない。
だとすれば、ひすいを見分けるのに役に立つだろう。