2020年8月24日月曜日

宇宙の色

 


高所に登れば登るほど、空は色を変えていく。
地球を覆う大気は、対流圏、成層圏、中間圏、熱圏などの層に覆われている。成層圏はだいたい1万メートルより上(極地では8000mより上)とされ、ここにはオゾン層があり、宇宙からの有害な紫外線の大半を吸収している。
もちろん対流圏にある大気も紫外線を吸収している。そのため上に行けば行くほど、紫外線が強くなっていく。
だが、紫外線は人間の目には見えない。
したがって、高所の空がより青く見えるのは、もっと別の理由がある。
空の色が青いのは、空気中に浮かぶ水蒸気やエアロゾルに光が当たって散乱するからである。
高所に行けば、これらの空気中に含まれるものが少ないため、より青色が人間の目に届きやすくなる。青色は光の波長が短く、より散乱しやすい。
夕日が赤く、雲が白いのも、この散乱という現象が関係している。

要するに、空気がきれいだからより青く見えるのである。
実際山の上から人間の住む街の辺りを見ると、煙みたいな灰色のベールに覆われていることが分かる。
そこには「汚い空気」が満ちている、というわけだ。

空気中に含まれるものが少なくなるにつれ、光は散乱されなくなり、だんだん黒色に近づく。
人工衛星の窓から見える宇宙の色が黒いのは、地球に届く光が人間の目に見えないからである。

昔の人が高度の高い場所に「仏の浄土」を想像したのは、ある意味正しい。
そこには人間の生活臭がしない。

人間はそこに余り長い間とどまれない。
人間はエアロゾルがたくさんある汚い空気の中でないと、生きていけないのだ。

魚がけっこう汚い水の中でも生活できるのと似ている。
昔の人は「水清ければ、魚住まず」と言った。
水がきれいすぎると、魚も生活できないというのだ。