2020年1月10日金曜日

ヒスイは本当に価値のある石なのか?

石英=SiO₂
曹長岩=NaAlSi3O8
灰長石=CaAl2Si2O8
緑閃石=Ca2(Mg,Fe)5Si8O22(OH)2(Mg/(Mg+Fe)=0.5-0.9)

ヒスイ輝石=NaAlSi2O6


手前の石はヒスイでほぼ間違いないと思う。しかし、あまりにもスッパリ切れすぎており、人工的に切られたもの(端材)である可能性があると思う。

上の写真の太陽光写真。


昨日の記事で、「ミャンマーやその他の海外産のヒスイは非常に品質が良い」と書いた。
ミャンマー産のヒスイは産出量も多く、品質も日本産に比べると桁外れである。下の動画はミャンマーの19歳の少年が発見したヒスイ原石らしいが、ものすごい透明度である。
こんなものは、決して日本では産出されないだろう。
良いものになると、億単位で取引されるという。



最高品質のヒスイは「琅(ろう)かん翡翠」と言われ、全体が混じり気の無い、深い緑で透明度が非常に高い。
楽天市場で売られているリングは1000万円以上の値段が付いている
このような石は、めったにないからこそ、これだけの価値がある。

原石の産地であるミャンマーでは、170トンぐらいの原石が発見されている。日本にも100トンぐらいの原石があるが、これらの中に、ろうかん翡翠というべき部分がどれだけあるのか、わからない。
それだけ、ろうかんひすいは貴重なものである。
ミャンマーでは、このようなろうかんヒスイを求めて、ゴールドラッシュならぬ「ひすいラッシュ」が起こり、崩れやすい危険な蛇紋岩質の崖に多くの人が集まり、治安の悪化や麻薬の蔓延で、まるで地獄のような有様である。ろうかんヒスイなど、ミャンマーといえどもそうたやすく見つかるはずはない。多くの人々がヒスイを求めて集まり、事故で亡くなったり、麻薬によって廃人になったりしている様子が報告されるにつけて、複雑な思いを抱かざるをえない。
ミャンマーは非常に貧しい国であり、人々は生活のためにそうしているのだろう。
悲しいことである。
 
「ひすいを含んだ石」は、その気になれば海岸でけっこう見つかる、と思う。
上に化学式を示したように、「ひすい輝石」自体は、ケイ酸塩鉱物といわれる、石英やガラス(=SiO2B2O3AI2O3Na2OCaO)の仲間であり、特別珍しい鉱物がふくまれているわけでは無い。
珍しさから言えば、糸魚川でしか産出しない奴奈川石や青海石、糸魚川石の方が比較にならないほど貴重である。これらはストロンチウムやチタン、バリウムを含んだ鉱物であり、世界で他に産出するところは発見されていない。

石英は公園の砂の中にも大量に含まれるほどありふれた鉱物であるが、これの純粋な結晶である「水晶」でも、いいものになると5000万円以上の値段が付いている。
翡翠でも同じことが言える。

ようするに原石は大量にあるが、宝石に値する、きれいなものはごく稀にしか見つからない、ということだと思う。また、そのような石の中でも、貴重な部分はさらにわずかしかない、ということではないか?

宝石を扱う業者はこのことをよく知っており、翡翠でも要らない部分は廃棄しているのであろう。この間拾った石は、自然の力で割れたにしては、あまりにも切れ口がまっすぐすぎ、翡翠であることはわかるものの、どうも違和感を感じさせる石であった。

もしもそうであれば、私は翡翠加工業者が「不要な部分」として捨てた石を拾って喜んでいたことになる。

ひすいは巷で評価されるほど、貴重な石ではないのかもしれない。

だとすれば、海岸での石拾いは、翡翠にこだわることなく、「美しい石」を拾えばいいのではないか?

ただの石ころではあるが、苦労して歩いた結果見つけた石であれば、それだけ思い入れも出てこよう。

ただ広大な、美しい海岸を歩くことこそが貴重な体験なのだ。
欲に駆られて、探すまでのものでもない。