前に軟玉ひすい(ネフライト)と、硬玉ひすい(ジェダイド)の違いの事を書いたことがあった。
もともと、中国で「玉(ぎょく)」と言われ、徳の高い石だ、とされていたのはネフライトの方である。
(※ 古代に藍田玉と言われ古典の中に登場する「玉」は、ネフライトではなく、カルサイトと蛇紋大理石の共生体である。のちにホータン産の白いネフライトの方が尊ばれるようになったようだ。)
後から知ったことであるが、ネフライトは硬玉ひすいよりも靭性(われにくさ)では勝っている。
モース硬度はわずかに柔らかいものの、これは割れにくさを意味しない。
ちなみにモース硬度10であるダイヤモンドは、トンカチでたたくと割れてしまう、という。
硬玉ひすいは靭性の点ではダイヤモンドよりも勝っており、よほど大きな力を加えない限り、簡単に割れることはない。これは硬玉ひすいが細かい結晶の集合からできているからである。
ネフライトも結晶の集合からできているので割れにくいが、ネフライトの結晶は「繊維状」であり、硬玉ひすいの結晶よりもさらに丈夫である。
普段、お守りとして持ち歩くには、割れにくさの観点からネフライトの方が適している。
また、「美しさ」の観点から見ても、ネフライトの方が勝っている。
なぜなら、表面が潤っていて、つやがあるからだ。
このため日本人は「油石」である、と表現したが、このつやつや感は他の石にはない。
もちろん、硬玉ひすいにもない。
透過光も、何とも言えない美しさを備えている。
やはりこの石の方が「美術的観点」からすれば、美しいと思ってしまう。
GIA(Gemological Institute of America)に掲載されているこの記事が非常に秀逸で、ネフライトのことを知りたければ、ぜひともご一読されたい。
また、GSTVのページに記載されている「アヒマディ博士のジュエリー講座」のネフライトの解説も、とても詳しい。
日本で産出するネフライトは、中国で「碧玉」と言われるものに該当すると思われる。最高品質の「羊脂玉」と比較すると、品質は悪いとされる。
(日本で「碧玉」と言えばジャスパーのことであるが、中国では「碧石」と言われるらしい)
ネフライトの原石は、カナダやロシアで大規模に採掘され、資源量は膨大である。
300トンぐらいの原石がごろごろあり、ほとんどが中国に輸出されている。
中国ではとくに美しいグリーンのネフライトが喜ばれ、品質の良いものは非常に高価である。
日本で産出するような石は、グレードが低いと思われるが、それでも透明度の高いものはあるように思う。
中国の人たちはこの石をバングルに加工したりしている。
石自体がたくさんあるので、高価ではない。
中国のお土産屋さんで売っているひすいのアクセサリーは、ほとんどがこの石の、カナダやロシアで採掘されたものである、という。
もちろん中国のウイグル自治区ホータンなどでも産出されるのだが、最近では資源が枯渇し、ホータン産のネフライトはプレミアムが付くようになっている。
以上のように、宝石としてのネフライトは、日本でこそ「油石」と言われてバカにされているが、そのような価値の低いきつね石などではなく、歴とした伝統のある素晴らしい宝石である。
私がこの石を愛し、常に身に着けているのは、この石の「徳」にあやかりたいからでもある。