最近読んだ本について書こう。
これは古典インド説話集みたいなもので、面白かった。
題名の『屍鬼二十五話』の「屍鬼」は、いわゆる「ゾンビ」のことである。
中国では「キョンシー(殭屍)」とよばれているものに相当する。
ある王様(トリヴァイクラマセーナ王)が、修行僧(クシャーンティシーラ(寂戒))の願いにより、ある呪術を完成するために、墓場の死体を運ぶ仕事を手伝うことになった。
これは大団円でどんでん返しがあるのであるが、それはネタバレになって面白くないから書かないでおこう。
王様が墓場に行くと、シンシャパー樹(とてもかたい木)に死体がぶら下がっており、それを下すとその死体には屍鬼(ヴェーターラ)が取り付いている。王はそれを背負って修行僧のところに運ぼうとすると、その屍鬼は口をきき、物語を始める。そして最後に「さて、あなたはこの話についてどう思うか?」と王に問答をかける。
「もし、この問題が解けなければ、あなたの脳は粉々に砕けるであろう」、という呪いの言葉とともに。
王が正しく答えると、その死体は元の木の上に帰ってしまう。王は再び死体を下して修行僧のところに運ぼうとする。これが24回も繰り返されるのである!
その時、屍鬼が語った物語が『屍鬼二十五話』の内容である。
それぞれが面白く、考えさせられる。
私は最初の答えを読んだ後は、自分でその答えを考えてみたが、ほとんど正解しなかった(ということは、もし私が当事者であれば、とっくに脳が砕け散ってしまっていたであろう(笑))。
まあ、1000年ほど前に書かれた話であるから、当時の時代背景やインドの文化を理解したうえでないと、なかなか正解しないであろうが。
ひとつ読み終えるごとに、何か大事なことを学べるような気がした。
昔のインド人はこうやって王様などを教育したのかなあ、と思った。
話は決して高貴な芳香を放つものばかりではなく、下世話で卑俗な話も混じるが、その中に何とも言えない人生の妙味が込められており、納得できるのである。
これらの話は、もともとは王の妃の退屈を紛らわせるための話であったといわれている。
たしかにこれを読むと退屈が紛らわされるような気がする。