2023年2月15日水曜日

ひすいから「素材」そして「美意識」



 昨日述べたように、勾玉に使われた「石」は、ひすいだけではなく、蛇紋岩、碧玉など、さまざまであった。
そして、それが選ばれる理由は素材よりも、その「色」にあった。
永遠の生命を象徴する「緑(古代の色感覚では青)」は、とりわけ神聖な色であったのだろう。
その後、碧玉やめのう製の「赤色(紅色)」が登場した。これは中国の紅山文化の玉製品の渡来に影響を受けているのではないか、と私は考えている。
中国の紅山文化は日本の「定型勾玉」の形の原型になったかもしれない玉製品を作っていた。
これが日本の勾玉の形に影響を与えたのではないだろうか?
紅山文化で信仰されたのは「蛇」であり、これによれば定型勾玉の形は「蛇(あるいは竜)」を象ったものである。
これがある時期に北九州、出雲地方に渡来したと私は考えている。
古代史は考古学の世界であり、結局想像でしかないが。

ともかく、古代の日本人は、中国人が「玉」というマチエールにこだわったのとは異なり、素材よりも「色」を尊んだ、と思うのだ。
中国人が「玉(ネフライト)」の代用として「ひすい輝石」を見出したのとは全く異なる方法で、「ひすい輝石」に対して価値を見出していたのではないだろうか、と考えている。
でないと、「質感」の優れた「玉」が日本にたくさんあるのに、なぜ「ひすい輝石」の方がより尊ばれたのか、説明がつかない気がするのだ。
やはり「ひすい輝石」は日本人にとって特別の石なのだ。そしてその理由はひすい輝石が持っている美しい「青色」に原因していたのではないだろうか?