2022年6月27日月曜日

文化財の保護について

 たとえ文化財等の所有者であっても、文化財を棄損する行為は厳罰である。


”他人の所有物を破壊する行為は主に器物損壊罪に問われますが、文化財保護法が定義する文化財を破壊すると器物損壊罪よりも重い刑罰が科せられると心得ておくべきでしょう。

また、文化財保護法は、破壊行為をはたらいたのが文化財などの所有者であっても処罰の対象としています。法定刑は、重要文化財の場合も、史跡名勝天然記念物の場合も、2年以下の懲役もしくは禁錮、または50万円以下の罰金、もしくは科料です。”
とかく忘れられがちのことであるが、文化財、あるいは天然記念物等は毀損無く後世に伝えられるべき、国民の財産である。
これに対してたとえ研究その他の目的があったとしても、棄損をすれば罪になるだろう。

なぜ保護する必要があるのか、という議論もあろうが、指定を受けた文化財は国が特別に保護の必要ありと認めたものである。
簡単に現状を変更することが禁じられているのは、それこそ国立公園内のものは草木一本たりとも損なってはならない、という事と同じことである。
ただ、文化財活用のために特別な許可を国が出している場合は、必要最小限の変更が認められる場合もある。
実際国立公園などの中は遊歩道も整備され、山小屋等も整備されている。
ただそれにしても、厳しい審査を経た後に許可されているのである。
従って国立公園内では原則としてテント場以外での野営は禁止されている。
できるだけ現状変更をしないように、配慮されているのである。
従ってごみの不法投棄などは、厳罰に処せられる行為である。

2022年6月24日金曜日

白山を構成する岩石

 ※参照 東野外志男「白山の生いたち」(『白山の自然誌』27)、平成19年、石川県白山自然保護センター、pp.19-20

砂防新道下山う回路にて。手取層のさまざまな岩石

白山を構成する岩石には大略6種類ある、という。

① 片麻岩(飛騨変成岩類)
② 砂岩(手取層)
③ 礫岩(手取層)
④ 溶結凝灰岩(濃飛流紋岩類の類似岩石)
⑤ 月長石流紋岩
⑥ 安山岩

観光新道でよく見たのは圧倒的に③の礫岩(手取層)であった。
かなり大きな礫(角が取れた丸い石)が多く含まれ、取れて道に転がっているものもあった。これは先カンブリア時代、大陸で作られた正珪石が川で運ばれて、長い間のうちに石英だけ残った硬い石であるという。これが堆積層に取り込まれ、残ったものだ。同じ成り立ちのものが、富山の刀利にもある。

後、黒い石炭のような石を多く見かけた。これは白亜紀前期(約1億4500万年前)に形成された岩で、「桑島層」と呼ばれ、細粒雲母質砂岩と炭質頁岩からなる。
これはまさに「恐竜の化石」が発見されている地層で、上の写真の黒い石が炭質頁岩のかけらである。
⑤の月長石流紋岩は、白山から少し北西方向の鷲走ヶ岳で見出されている。これは富山だと、城端の臼中ダム周辺に存在する。
①の飛騨変成岩類は、中宮の尾添川流域あたりに存在する。これは大昔大陸の一部だった部分に、後から花崗岩(船津花崗岩)が嵌入したものである。何度も変成作用を受けており、元の岩石が何だったのかは特定しずらい。

白山は最初は3000mほどもある火山だったが、激しい浸食と新しい噴火を繰り返し、今の高さになっている。元の山体は、大汝山の向こう側の火の御子峰や地獄谷あたりにあったと思われる。
また土台そのものも隆起したり浸食されたりしているため、複雑な地質を構成している。
そのために様々な岩石や化石が存在するのである。

岩石が好きな人間にはとても興味深い場所で、また機会があったら行ってみたいと思う。

2022年6月23日木曜日

白山 やっぱりいい山だよね


今回で5回目の登頂となった白山。
そのうちの3回は岐阜県側の「平瀬道」からなのだが、一番最初に登ったのが10年ほど前。
そのころはまだ登山を始めたばかり。だからいつも白山に来ると”初心に帰る”。

標高差は1500mほどだから、馬場島から剱岳の早月小屋ぐらい。
あとよく似た標高差では大日岳(称名滝)、大笠山ぐらいだろうか。
しかし整備が行き届いているので、標高差と距離ほどに「大変」だと感じない。

北アルプスの同じ標高の山ではたまに高山病みたいな症状が出たりすることがあるのだが、どういうわけか白山ではそういうことはほぼ無い。自分でも不思議だと思っている。私は空気の薄いところは苦手で、2500m以上に上がると、何らかの症状が出やすいからだ。どこかから酸素が出ているのかもしれない、と思う位である。
冗談はともかく、広々とした気品のある山で、自然がそのまま残っている。
日本三霊山と言われるにふさわしい山。
何度登っても飽きない。
また登山者の層が厚く、上級者から初心者まで、誰にでも親しみやすい山でもある。

しかしながら、今春もあったが、バリエーションルートでの遭難死亡事故もある。
奥深い山であることを忘れてはいけない。

2022年6月22日水曜日

白山 ↑観光新道 ↓砂防新道 古い岩石の多い山

※ 完全に常識の範囲内なのだけれども、国立公園内のものは、小石一つ、草本一本たりとも傷つけたり持ち出したりしてはいけません。「自然公園法」という法律が存在し、違反すると拘禁刑を含む厳しい罰則があります。
岩石の観察は現地でのみ行いましょう。

昨日は1年ぶり白山登山。最近白山の事についてよく書いたし。
大陸からやって来た岩も見つけて満足。やっぱり白山の地質には大陸由来のものが含まれているようだ。
数年前、観光新道を往復したので、今回も登りは観光新道を利用。
6月17日から通行可能になったようだ。
「馬のたてがみ」の上部、黒ぼこ岩の前までの道で、一部アイゼンの必要そうな雪渓のトラバースがある。
帰りは生まれて初めて「砂防新道」を利用してみたのだが、かなり急な道で驚く。
しかも少し距離は長いようだ。
沢沿いの道なので丸い石が多く、下山には不向きと見た。

朝5時に別当出合から観光新道へ。今の時期は別当出合まで車が入る。


喜市郎坂を上って、越前禅定道に合流。

この岩だらけの道がお気に入り。

雪渓も出てきた

道に転がっている石は、正珪石を含んだ礫岩だと思う。後で調べたら、やはり大陸由来のものだそうだ。刀利礫岩層の仲間だということになる。他にも恐竜の化石を含んだ手取層、飛騨片麻岩、濃飛流紋岩など、基盤は古い岩石で出来ている。上部は噴火堆積物が多い。

黒ぼこ岩。これは火山の噴石っぽいね。安山岩であろう。

下山は砂防新道を利用するのが、今日の目的の一つ。

山頂は9時30分。4時間30分

荒天になる予兆の雲だね。はやく下山しよう。

御前峰の周辺の石はさすがに安山岩質のものが多いね

室堂

はいまつがきれい

水場で水を頂く。水場でカップ麺の汁を捨てると汚くみえるので、きれいに掃除しておいてもらいたいね(見ようによっては吐しゃ物に見える)

五葉坂付近までくるとガスが急に湧いてきた。予想通り

まだ雪が多いね

分岐まで戻って来た。ここから砂防新道に進む。まだこの辺りは安山岩だらけ

雪渓の下に水場があります

けっこう急な雪渓。観光新道より急で危なそう

何回か緊張を強いられる雪渓のトラバースがあるので、チェーンスパイク、軽アイゼンは必ず持ってこようね。ピッケルも必要だと思う。

延命水を一口頂きました。これは流紋岩から出ている水だね

南龍分岐までの道の険しい事!予想外だったなあ。雪渓のトラバースも観光新道より圧倒的に多い(ただし道はわかりやすい)。

甚之助小屋。ここまで来ると、礫岩層になってくる。

向こうに見えるケーブルのようなものは何だろう?

上りに利用した観光新道

帰りは下り専用のう回路を通ってください。

時たま黒い石が含まれている。この石には真っ赤な鉱物が。もしかしたら鶏冠石か何かなのだろうか?錆びている石は、古い時代の石が多い。

流紋岩の壁かな?

白山はいろいろな地質で構成されているようで、とても面白い。

最後のつり橋から上流部を望む。このころになるとすっかり上の方は雲に覆われてしまった。

2022年6月19日日曜日

能登半島の地震

 能登半島で震度6弱

能登半島最先端禄剛崎にて 2022/3

能登半島でずっと「群発地震」が続いていたが、本日の地震はやや大きかった。
M5.1、震源の深さ8km、逆断層型(AQUAシステムのCMT解)であるから、浅い所で起こった「プレート内地震」であろう。
能登半島先端では、何か水蒸気かマグマのような物が上昇してきているのではないか、という観測がある。
いつも同じ「木浦海岸」あたりで発生している。
地質的には、溶岩や火砕岩のある場所ではある。

これによって、日本列島が大陸から引きはがされたのである。
これが大体2700万年から2300万年前(漸新世から中新世ぐらい)の出来事とされる。
その名残が、まだ日本海に残っていても、おかしくないと思われる。
(ちなみに能登半島の溶岩は、2000万年前から1500万年前ぐらいのものであると考えられている。)

環日本海の火山活動が何の前兆も無く、再び活発になることもありえないことではない。
日本列島は世界の火山の10%を抱える「火山国」でもある。
どこで何が起こってもおかしくない。
大昔の岩石を調べることで、そこで過去に何が起こったのかが分かれば、必要な備えをすることも可能である。

2022年6月9日木曜日

ひすいとは何か②

 


前回はひすいの化学構造式からすれば、「特別珍しくもない物質で出来ている」という事を言った。
今回は「ひすいの怪」というか、謎というか、複雑だ、ということをお話ししよう。
別に「怪」といっても、スピリチュアルな話ではなくて、文字通り”ひすい”の定義が「あやしい」ということを。

ひすいはたくさんの「ひすい輝石」の結晶が集まって出来たものだ。
これに類するものに、石英の細かい結晶が集合して出来た「玉髄」というのがある。
玉髄はほぼ、石英で出来ており、あまり不純物は含まないように見える。

しかし、同じような構造のはずの「ひすい」には、いろいろな鉱物が混じる、というのだ!
しかもそれを「ひすい」と呼んでも構わない、という。
混じる鉱物は「曹長石」「ぶどう石」「ソーダ珪灰石」「蛇紋岩」「ロディン岩」など、たくさんある、という。

この時点で、おかしなことに気づく。
ひすい以外が混じった石を、もし”ひすい”と呼ぶとすれば、例えば「金」のイオンを含む「海水」も「金」だと呼べることになるではないか?
事実、石英はいろいろなものが混じるが「金」をたくさん含んだ石英は「金鉱石」と言われる。実際はほとんどが石英である。
しかし鉱物の「金」はまさにレアメタルであり、曹長石からケイ酸分子を一つ取っただけのひすいとは似ても似つかない。
それと同じように「ひすいが少し混じっているから、ひすいである」というならば、そこら辺の石ころがみな「ひすい」になってしまう。なぜなら、前回書いたように、長石類は地殻の中での割合が一番多いから。

”ひすい”の呼称はやはり「ひすい輝石」が高い割合で(おそらくほぼ100%)集まったものに対してのみ使われるべきであって、それ以外の「すこし混じった鉱物」に対しては、使ってはならないのだ。敢えて言えば、そういう石は「ひすい輝石鉱石」とでも呼ぶべきである。

しかし実際はそうではない。少しでも「ひすい輝石」が混じっていれば「ひすい」だと言っている。
本来なら「不純物」が多い「ひすい」は、精錬されてはじめて「ひすい」と呼ぶべきだ。
金の混じった「金鉱石」が、「金」と呼ばれないのと同じである。
この辺りがはっきりしないことが、「ひすい」の定義を複雑にし、分かりにくくし、あいまいにしている。

これを私は「ひすいの怪」だと考えている。

2022年6月8日水曜日

ひすいとは何か①

 


山も梅雨に入ったようで、晴れ間があれば行くかもしれないが基本的には行けないので、これからシリーズで「ひすいとは何か?」について、ありのままに書こう。

そのうち、一番多いのが「長石」類であり、これだけで64%を占めている。

カリウムイオンが紅柱石、藍晶石などの成分である、ケイ酸アルミニウム(AlSiO)と化合したものが、「カリ長石」
ナトリウムイオンと化合したものが「曹長石」
カルシウムイオンと化合したものが「灰長石」と言われる。
これらは「ケイ酸塩鉱物」と言われ、ごく当たり前に存在する鉱物で、珍しくない。
上のリンクにも書いたが、このうちの「曹長石」からケイ酸分子一個を除けば、なんと「ひすい」になってしまうのである。
さらに長石はアルミ元素(1円玉の成分)を含む。アルミが地殻上には非常に沢山あることがわかる。
長石から、アルカリ金属と余分なケイ酸イオンを適宜取り除けば、「酸化アルミニウム」になり、これの結晶したものが、ルビーやサファイヤの実質である「コランダム」になる。

つまり、ひすいとかルビーとかは、物質そのものはそこらへんにどれだけでもあるのだが、その構造と結晶が珍しい、ということになる。

これが科学的に見た「ひすい」である。
石英の結晶が水晶であるようなものである。
地殻上の割合からすれば、ケイ酸分子は一番多いが、石英に限ってみれば、長石類よりも少ない、ということになる。

従って、ひすいよりキツネ石(含ニッケル珪質岩)の方が、よほど貴重だ、ということにならないだろうか?
詭弁だろうか?
ちなみに、金属ニッケルは最近価格が高騰し、「レアメタル(希少金属)」の扱いである。
もともと、地殻上には少ない物質である。

キツネ石は、貴重な石なのではないだろうか?

2022年6月6日月曜日

ひすいハンターになりたい人が多いのか。



最近、いわゆる「ひすい海岸」と呼ばれる富山から糸魚川の北あたりの海岸を歩いている人が多くなった。
マスコミや雑誌「ミネラ」で紹介されたり、糸魚川市による大々的な観光アピールが功を奏して、多くの人が訪れるようになってきたのだと思われる。
それにつれて「ひすいハンター」になりたい、という人も増えたのであろう。

あまり言うのも夢を潰すようで気が引けることもあるが、現実は厳しい。

1.ひすいを拾えることは、めったにない

まず、最近のブームでひすいはめっきり減少し、もはや拾いつくされているのではないか?と思われる。以前ですら「めったにない」石であったのに、最近では真にレアになってしまった感がある。
また上流の治水工事や海岸工事(日本海の荒波で道が破壊されたりするので)によってテトラポットが海に投入され、海岸の様子が様変わりしてしまった。
以前のように「石ころ」でおおわれた海岸、ではなくて砂が多くなってきた。
砂が堆積すれば海岸の面積が増え、陸地は浸食されない。
これは私たちが安全に道路や鉄道を利用できるようにするための必須の措置である。

2.海岸に落ちているひすいは金銭的価値がない

たとえどんなきれいなひすいを拾ったとしても、それが「宝石」としての価値があるとは限らない。
宝石加工の人は、世界的なレベルで原石を見るので、海岸に転がっているようなレベルの石を加工しても利益にはならない。
もっとも、「おみやげ」としてたくさん加工されてはいる。
しかし、それは本当の”宝石ひすい”ではない。
ひすいの本来の価値である「宝石」としての用途に使用するために、宝飾用の加工業者はミャンマー産のひすい原石を輸入している。

3.採取自体が法的にはグレーゾーンであり、基本的に転売できない

現在、オークションや市場に出回っている転石のほとんどは「過去のデッドストック」として転売されているのが現状である。
海岸から拾った石を転売するには、当局の許可が必要になると思われるが、まずそういう許可は出ないと思われるので、法的には微妙なところである。
ただし、大幅な現状変更を伴わない軽易な石拾い程度の行いは黙認されている。もちろん、これは自然公園や国の指定地域以外での話で、指定地では「たとえ小石一つ拾っても」犯罪になる。
また糸魚川は「世界ジオパーク」の指定地であり、規約に「鉱物を転売してはならない」と定められている。

以上のようなさまざまな制約があり、かつ、ひすいを拾える可能性は極めて低いので、「ひすいハンター」で生計を立てることはできない。

ただ、海岸を歩いて、きれいな空気を吸い込み、健康になれる、という価値は大きいであろう。
不安定な足場を歩くので体幹が鍛えられ、転ぶことが少なくなる。
また、精神的にも爽快になれる。