2018年11月4日日曜日

秘境

2014年に大笠山山頂付近から撮影
うっすらと雪化粧した仙人窟岳から笈ヶ岳 2018/11/03
深田久弥の『日本百名山』のあとがきに「笈ヶ岳か大笠山はぜひ百名山に入れたかったが、登頂の機会を得ないので遺憾ながら割愛した」とある。この山の素晴らしいところを書けば、本当にきりがない。
まず、このあたりは秘境と言われる富山県の五箇山の最奥部にあり、白山国立公園の北側にあたる。
国立公園の中での人間の行動は厳しく制限されているために、手つかずの自然が残されている。笈ヶ岳には未だに登山道すらない。今後も登山道なんて作って欲しくはないけれど。
同じ国立公園でも比較的開発が進んでいる北アルプスと比較して、この周辺は人の手が入っていない。
従って、登山道も何年経っても同じような雰囲気である。まあ、それを楽しめなくては本当の山好きとは言えないだろうが。
山らしい山である。ということは、同時に危険も多いわけであるが。

古い文献によれば、この山中に昔20mの高さの五重塔があったという。白山の修験道が盛んであったころ、白山から医王山に至る尾根道は、修行の道として使われていたという。
どこまでが本当かは分からないが、こんな険しい場所を昔の人が歩いていたなんて、にわかには信じられない。しかし遺跡としてこの稜線の「妙法山」や「笈ヶ岳」の山頂からは法華経の入った経筒が発見されたり、仏像が発見されたりしているのだ。
白山の北縦走路は「神の道」と言われているそうだが、こんなすばらしい大自然の中を歩けば、神様に逢えるのかもしれない、と思った。

北アルプスは東京からのアクセスも良く、観光化が進むのはやむを得ないと思う。
だがそのお陰というのも何だが、アクセスに時間がかかるため、白山山域は開発されていない。結果としてこのようなすばらしい場所が残ることになった。

提案であるが、このような素晴らしい場所は、今後人の手が入らないように「特別保護地域」に指定してほしい(大笠山から白山までの稜線については、特別保護地域になっているようだ)。一部指定されているようではあるが、白山山域は、北アルプスに比べてまだ少ないように思う。

日本にはいろいろな「知られざる秘境」があると思う。何も黒部峡谷だけが秘境ではない。
(わざわざ「阿曽原温泉」に行かなくても、それに匹敵する場所はまだまだある、ということを伝えたかった)