2019年1月5日土曜日

2019年 亥年


2018/2 猪臥山

今年は亥年。吉野裕子『山の神』によれば、蛇と亥は「山の神」であるという。
なぜ山の神なのかは、陰陽五行思想に当てはめると説明ができるのだそうだ。
陰陽五行説では、易の卦の一つである「乾(けん)」を十二支の巳、「坤(こん)」を亥に当てる。
日本では蛇は古来から山の神として信仰されていた。ここに中国から伝わった陰陽五行説による解釈が加わり、全陽の卦である「乾(巳)」の真逆の全陰の卦である「坤」が亥であるから、山の神がイノシシとされたのだ、という。
事実、山の神のことを「十二様」と言う地方があるのは、陰陽五行説による解釈であることを忘れないようにするため、であるという。
山にはたくさんの動物がいる。クマも居れば、タヌキ、キツネ、十二支に入っている動物としては、ウサギ、サル、ネズミなども居る。
しかし、この中でなぜ特にヘビとイノシシが神として選ばれたのか、吉野女史はこれについて詳細な分析を加えられたのである。そして膨大な文献の分析、フィールドワークの積み重ねによって、この結論が導き出された。

今でも「オコジョは十二様の使いだから、遭遇したら下山したほうが良い」とか、「十二様の日に入山することを忌む」とかいう習慣が、山で暮らす人々の間で信じられているという。
「十二様」の十二とは陰陽五行説の十二時であり、十二方位である。そして十二支の最後にあるイノシシは、日本古来の山の神であるヘビの反対側に位置する。
以前から「なぜ、山の神のことを十二様と言う地方があるのか」と疑問に思っていたが、この説で疑問がいくらか解消されたように思う。

飛騨にある猪臥山の山頂には「山ノ神」という標柱のある祠がある。
山の名前に猪が入っているのは、この山にイノシシが生育しており、通り道があったからだという。飛騨ではかつて猪番という役を置いて農作物を荒らす猪を捕獲した。
しかし、これは近世の話であり、この山の名にはもっと深い意味があるような気がしてならないのだ。
たいていの山には、大国主命だとか、菊籬姫だとかいう神様が祀られている。
また、蔵王権現のような仏教に由来する仏が祀られていたりする。

しかし、猪臥山には「山ノ神」が祀られているだけである。
山ノ神がイノシシだとしたら、山名に猪が入っているのは、ごく自然なことに思える。